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障害者を取り巻く問題
障害者の権利条約
2006年12月13日、「障害のある人の権利に関する条約」(The Convention on the Rights of Persons with Disabilities)(以下、権利条約)が国連総会で採択されました。
2002年から8回に渡る特別委員会での議論を経て、世界中の障害者の声が実を結びました。
この間、DPIをはじめとする障害NGOは、"Nothing about us, without us !"(私たち抜きに私たちのことを決めるな!)を合言葉に働きかけを続けてきました。
2007年3月30日に国連加盟国に対して署名が開放されました。批准国が20ヶ国を超えた時点で、この条約が締約国に対し効力を持つようになります。
2008年5月3日 障害者の権利条約が発効
障害者の権利条約の批准国が20カ国を超え、5月3日ついに発効となりました。「発効」、つまり条約の効力が生じるとは?
- 批准した国は、条約の規定を守り、実行することが義務付けられます。
- 6ヶ月以内に「障害者権利委員会」がつくられます。そして条約を批准した国は、権利委員会に対して、条約の実施状況を報告しなければなりません。
「障害者権利委員会」には、批准・加盟をした政府から推薦を受けた人が入ります。国連で活躍した、各国の当事者も委員に加わるかもしれません。注目しましょう!
日本政府は、2007年9月28日に署名を行い、政府仮訳を公表しました
「署名」は、国が条約の内容を承認し、尊重し、将来的に批准するという意思表示です。
条約の署名に伴い、日本政府の仮訳が公開されました。
政府仮訳
障害者の権利に関する条約(外務省ホームページ)
川島聡・長瀬修 仮訳(2007年10月29日付)
条約の構造 -やさしくまとめました-
大きな構造と枠組
障害者の権利条約は、自由権と社会権をまとめた形(包括モデル)になっています。健常者にあたりまえに保障されている権利を障害者にも平等に保障しています。逆に言えば、障害者に特別の権利を与えるものではないのです。
例えばこのために条約は「合理的配慮」という考え方を取り入れています。これは、障害者が障害のない人と実際的に平等な機会を保障されるためのものです。例えば…条約では、障害者であることを理由で雇用しないという差別を禁止しています。同時に、「合理的配慮」を行うことで障害者が仕事ができる環境をつくること(段差をなくす、手話をつかうなど)を義務づけています。また、選挙権についても、投票所がバリアフリーでないと実質的に権利を行使することができないので、意味がありません。ここでも合理的配慮が必要になります。
- 前文:法的拘束力はありませんが、解釈の指針となります。
- 総則部分・一般規定(1条から9条):条約全文にかかる基本的な概念・原則です。
1条「目的」 2条「定義」 3条「一般原則」 4条「一般的義務」 5条「平等及び非差別」 6条「障害のある女性」 7条「障害のある子ども」 8条「意識向上」 9条「アクセシビリティ」 - 個別規定(10条から30条):教育や労働、自立生活などの中身の部分です。
10条「生命に対する権利」 11条「危険のある状況及び人道上の緊急事態」 12条「法律の前における平等な承認」 13条「司法へのアクセス」 14条「身体の自由及び安全」 15条「拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取り扱い若しくは刑罰からの自由」 16条「搾取、暴力的及び虐待からの自由」 17条「個人のインテグリティ〔不可侵性〕の保護」 18条「移動の自由及び国籍」 19条「自立した生活〔生活についての自律〕及び地域社会へのインクルージョン」 20条「個人の移動性」 21条「表現及び意見の自由並びに情報へのアクセス」 22条「プライバシーの尊重」 23条「家庭および家族の尊重」 24条「教育」 25条「健康」 26条「ハビリテーション及びリハビリテーション」 27条「労働及び雇用」 28条「十分な生活水準及び社会保護」 29条「政治的及び公的活動への参加」 30条「文化的な生活、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加」 - 実施規定(31条から40条):条約実施のための国内的、国際的モニタリングなどについて規定した部分。
国内モニタリングの規定は、他の人権条約にない新しいものです。
31条「統計及びデータ収集」 32条「国際協力」 33条「国内的な実施及び監視(モニタリング)」 34条「障害のある人の権利に関する委員会」 35条から40条:その他履行に関する条項 - 最終条項(41条から50条):条約の効力発生や批准手続きなどの規定です。
(川島聡・長瀬修2007年10月29日付仮訳より抜粋)
一般規定 - 条約の基本になる部分
- 条約の目的(前文、1条)
すべての種別のすべての障害者に基本的人権と平等を保障しています。 - 障害の概念-障害とはなにか?(前文、1条)
この条約は、定義こそしていませんが、「障害」や「障害者」を、体のどこかに障害(インペアメント)があり、それとまわりの環境(階段や段差など)によって、社会参加に様々な制約を受ける人を障害者であるという考え方(社会モデル)をはっきりと規定してます。今の日本の障害の定義より広くなっています。 - 定義(2条)
(1)コミュニケーション(2)言語(手話は言語として認められています)(3)障害に基づく差別(「これこれの障害があるから、という差別(直接差別)」「一見、中立の決まりなどで実際に障害者が不利になる差別(間接差別)」や「合理的配慮を行わないこと」を差別としています)(4)合理的配慮(障害者にも健常者と同じような機会が平等にあたえられ、障害者だけが特別に努力をしなくてもいい環境をつくっていくことです)(5)ユニバーサルデザイン(すべての人が利用できるデザイン。障害の特性によるニーズを配慮せず、利用できない障害者がいてはいけません) - 一般原則(3条)
他の人権条約には見られないものです。自立、他の者との平等を基礎としたインクルージョン、違いを認めあい尊重すること、差別のないことと機会の均等などが規定されています。 - 義務(4条)
障害者の権利条約を妨げる法律や制度は、変えるかなくさなければなりません。
そのほか、平等および非差別という原則の確認(5条)、障害のある女性(6条)、障害のある子ども(7条)、意識向上(8条)、アクセシビリティ(9条)が一般規定に含まれます。
個別規定 - 条約の基本になる部分、DPIの課題に即して
- 移動することなどの自由について(9条、18条、20条、21条)
「アクセシビリティ」とは、自分の行きたいところへ移動できること、情報を自由にもらえて、ちゃんと説明を受けることができること、自分の伝えたいことを必要な支援を受けながら伝えられることで、とても重要な言葉です。 - 法の前の平等について(12条)
法律は、障害のある人も、ない人と同じ権利があるとしています。その時に、自分のことは自分で決めること、決めていいことが大切です。
また、自分のことを決める時に、必要な助けを受けながら、決められること、そのための支援をちゃんと用意することも大切です。 - 望んでいないのに入院や施設に入れられないようにすること(14から17条)
自分が望んでいないのに、入院させられたり、施設に入れられたりしないようにすることも、この条約で決められた大切なことです。
また、自分が決めるときに、ちゃんと支援を受けることができるようにすることも書かれています。 - 自立生活と地域で誰もがあたりまえに生活できる環境を用意すること(19条)
今も、施設など街から離れたところで生活させられている障害者がいます。19条では、自分が望む地域でみんなと生活できることが、あたりまえの生活であり、権利として約束されています。そのための支援も行うことが書かれています。 - 教育について(24条)
条約では、原則的に、みんなが地域の学校で、一緒に学ぶことができないといけないと強く書いてあります。条約を作るときにも、みんなが一緒に同じ場で学ぶためにはどうしたらいいか、いろいろな意見があり、たくさん話し合われてきました。日本政府は国連で、いままで分けて教育してきたことは直していきます、と言いました。 - 働くことについて(27条)
作業所で働く人と、会社で働く人とで、最低賃金など違いがないようにする必要があります。
また、働きたい人をしっかり支援していくために、制度を整えていくことも必要です。 - 参加について(29条、30条)
参加については2つのことが盛り込まれました。29条では政治に参加できることが、30条では、社会とのつながりの中で心豊かに生活できることや、余暇活動などに参加できることが定められています。
また、著作権などの知的財産権を尊重した上で、障害者が排除されることがないように注意することがかかれています。さらに、手話やろう文化も大切にすべきともされています。
実施規定 - これから条約の内容をすすめていくために
- 国際協力について(32条)
途上国に対して、さまざまな国が協力をすすめること、その時に、障害者を含めてすすめることが大切とされました。
また、障害者に直接関係しない国際協力であっても、障害者にインクルーシブであり、アクセスできることという規定が入りました。 - モニタリング・国内実施について(33条、34条)
この条約がきちんと日本の中でどのように進められているか、世界の国々で進められているかを、みんなで見ていくことです。
最終条項 (41条から50条)
条約の署名や加入、効力の発生、改正など、手続きに関することがかかれています。特に、49条には、条約本文はアクセシブルな形式で利用できるものにしなければならないと規定されました。