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2004年9月22日

北海道知事  高橋 はるみ 様

北海道の医療費助成制度を考える連絡会
代表  小谷 晴子

重度心身障害者医療費助成制度見直しに伴う
フォローアップ事業に関する意見書

 拝啓、時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。

 また、去る8月27日、9月14日及び16日の3回にわたる意見交換に応じていただいたことにお礼申し上げます。

 しかし、今回の意見交換会は、制度見直しを10月に控え、この見直しの結果として生じる、障害者や患者の不安や負担を少しでも緩和するための苦渋の選択としての対応であり、私たちの基本的意見と立場は、さきに提出している陳情書のとおりであり、知事及び道議会議長へは、引き続き、陳情書及び署名要旨に掲げた1割負担導入反対等についての追加賛同団体及び署名を提出するなど、当事者の立場から運動を継続していく所存です。

 つきましては、こうした私たちの立場を再度表明するとともに、この意見交換会で、私たちから医療費見直しに伴う課題や道の検討中のフォローアップ事業内容について意見を述べさせていただきました内容を以下のとおり提出しますので、道としての誠意ある対応をお願いいたします。

敬具

1 見直し実施後のフォローアップ施策の実施について

 今回の制度見直しによって影響を受ける当事者の「医療が受けられなくなり命に関わる深刻な問題が生じたらどうしよう」という不安を軽減するために、以下の事業の早急な実施を求めます。

(1)

 障害があるために必要とされる医療行為(人工呼吸器、CPの二次障害、脊髄損傷者の褥瘡や腎機能検査など障害程度悪化防止や障害特有のニーズ)で更生医療の対象となっていない疾患等を更生医療が適用されるまで道として独自の支援事業として実施してください。

 なお、連絡会では、現在、これらに関する調査を実施中で調査終了後(調査期限は9月末日)に、対象となる医療行為を提出し具体的なフォローアップ事業内容としてその実施を求めます。

(2)

 事業見直し後の影響調査(特に住民税が課税されているが低所得世帯及び更生医療非該当者で継続的な医療行為を要する当事者)を実施し、制度見直しによる障害者や患者の実態を把握してください。

 また、受診抑制等の具体的な課題が把握された場合、敏速な対応をしてください。

(3)

 精神保健福祉法32条が適用されず、精神障害者及びその家族にとって大きな負担となっている入院に伴う医療費負担の実態を把握し支援を検討してください。

 なお、連絡会では、現在、このことに関する調査を実施中で調査終了後(調査期限は9月末日)に、道にも資料として提出します。

(4)

 これらの事業等の検討及び実施に当たっては、引き続き連絡会との意見交換をお願いします。

2 見直しに伴うフォローアップ事業について

 連絡会としては、一部実施を否定する事業(テレビ電話相談)もありますが、それ以外は、必要な事業だと思います。全般的及び個別事業の内容に対して以下のとおりの対応を求めます。

(1)フォローアップ施策全般。

  1. 各事業の実施に当たっては、身体、知的、精神のみならず、様々な制限と制約及び困難な生活状況にあり、3障害と同様に社会的支援が必要とされる難病患者への対応も含めた事業として進めることが必要です。
  2. 各部各課等が実施している類似事業は、利用者のためにも行政の効果的、効率的な運用のためにも縦割りで実施することなく、連携して実施し事業効果の促進を図ることが必要です。
  3. 各事業の実効性を高めるため、それぞれの進捗状況の検証をするとともに、当事者及びその家族が参画、評価及び検証することができる環境の整備を図ることが必要です。
  4. 各事業は、継続的に実施が必要なものなので、3〜5年間に限定するような一時的、短期的な対応にとどめることなく継続的及び発展的に推進することが必要です。
  5. 現在、地方分権や三位一体改革の推進により社会情勢が大きく変化していますが、財源や権限委譲等により道の役割が変化しても、既存の事業及び今回示されているフォローアップ事業は安定的、継続的、発展的に取り組みを進めることが必要です。
  6. 各事業の実施に当たっては、施設で暮らさざるを得ない状況の問題点(地域での支援体制整備の遅れ)を認識して、その解決を図り、障害者が施設ではなく地域での生活が実現できる環境や条件整備を充実させることが必要です。
  7. 今後も連絡会及び当事者団体との協議により進めてください。
    なお、知的障害者との協議についてはその手法を十分に考慮して対応してください。

(2)更生医療などの環境づくり

  1. 更生医療について
    • 呼吸器機能障害者の更生医療の適用については、引き続き国へ要望してください。
    • 上記1−(1)で把握された医療行為についても更生医療の適用を国へ要望してください。
    • 更生医療の適用は、身体障害者手帳の記載内容で本来利用資格があるのに適用されない場合があるので、このような不利益がもたらされないように対応することが必要です。
    • 更生医療及び各種手帳申請に必要な診断書の適切な記載内容について承知されていない指定医がいることから医師に対して研修を実施することが必要です。
  2. 情報提供の充実(身体障害者手帳等システム化事業)
    • 身体障害者手帳、療育手帳に取り入れられる有効な内容は、縦割りではなく必要に応じて障害者手帳(精神障害者)にも反映させることが必要です。
    • 身体障害者手帳は、障害名の記載事項によって制度が利用できない場合があるので、そうしたことのないように記載事項や項目に留意できるシステム化を図ることが必要です。
    • 当事者と協議し当事者の意見を反映したニーズ(点字表示等)に即した手帳とすることが必要です。

(3)総合的な相談拠点の整備

  1. 相談支援体制の充実は、地域生活をおくる上で基本的なことであり、基幹型支援拠点は障害者や難病患者の地域生活を総合的に支援することが必要です。
  2. 基幹型支援拠点と自閉症・発達支援センターは連携して効果的に事業が進められるようにすることが必要です。
  3. 支庁圏域ごとの基幹型支援拠点の整備と児童相談所圏域ごとの自閉症・発達支援サブセンター整備は両立するように進めることが必要です。
  4. テレビ相談については、連絡会として、現段階での事業実施については、以下の理由により否定します。
    • 離島と稚内の成功事例は理解できるが道内26カ所の道立保健所のみの設置だけでは、身近な相談機能として有効であるか疑問があります。
    • 複雑困難な相談は、面接や訪問が有効であり市町村とも連携した人材育成及び体制整備(医師、保健師、看護師、精神保健福祉士、作業療法士等)が必要です。
    • 仮に実施するのであれば、この事業の有効性を検証するために1〜2カ所をモデル事業として実施し、その結果を踏まえて当事者団体とも協議した上で実施すべきです。

(4)重度障害者への支援

  1. 医療的ケアが必要な障害者及び難病患者の社会参加の場面において医療的ケアが受けられる支援体制の整備が必要です。
  2. 訪問看護ステーションの支援をはじめとする各種支援を実施するためには、それぞれが適切な対応をするための研修の充実が必要です。
  3. 重度の障害者がデイサービスセンターを利用できる体制の整備が必要です。
  4. 心身障害者(児)歯科保健医療推進事業
    • 口腔衛生の問題への対応が必要です。
    • 日常的に親や介助者など身近な人が対応でき、予防につながる環境整備が必要です。
    • 障害者(児)の特性を理解して対応することが必要です。
  5. 在宅障害者医療サポートシステム推進事業
    • 障害者保健福祉課、総合相談所、地域保健課それぞれ相談事業を実施するということで、相談者も現場も混乱しないように実施することが必要です。
    • 道立保健所だけでなく道庁内の関係機関、道内各保健所、市町村(保健師)、医療機関及び当事者団体を含む関係機関との連携の確保が必要です。
    • 害者の相談は、医療に限定せず全てを受け止めて関係機関との連携を図り対応することが必要です。
    • 医療問題については、相談内容やその実態に応じた具体的支援が必要です。
    • 事業の円滑な実施と利用者ニーズに対応できる人材の確保及び養成を進めることが必要です。

(5)地域生活移行のための基盤整備

  1. グループホームの設置に当たっては利用を障害ごとへの限定や重度障害者を排除することなくそれぞれのニーズに応じた対応ができる機能を充実することが必要です。
  2. 公営住宅を利用するなどグループホームの早急な整備が必要です。
  3. グループホームの体験利用ができる環境を整備することが必要です。
  4. グループホームは、最終的な地域生活の場ではなく、障害者もその人らしい暮らしを選択できるための環境のひとつとして整備することが必要です。
  5. 障害者の地域生活移行については、米国で始まり日本でも実施されてきた自立生活運動の手法が有効であり、施設利用者が地域生活を体験するなど、この運動の理念と実践に基づく取り組みを当事者団体との連携により進めることが必要です。
  6. 障害者手帳の交付対象となっていない難病患者及び自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害等のため、様々な制限と制約を受けている人々への支援も確立することが必要です。
  7. 地域生活移行については、「北海道障害者生活支援体制検討会議」には当事者も参加しているので、この会議との連携も含めて検討を進めていくことが必要です。
  8. 障害者の就労問題に対する対応及び保証人制度の創設も必要です。
  9. 地域生活の取り組みについても、その後の検証と評価をして施策を発展的に推進していくことが必要です。

(6)その他

  1. 聴覚障害者が医療や様々な相談を受ける際には、手話通訳などによる情報保障体制を整備することが必要です。
  2. 医療費給付事業見直し後の世帯合算の制度についての周知と利用者が対応しやすいに体制整備を市町村に求めることが必要です。
  3. 小規模作業所への支援の充実も必要です。

以上

DPI(障害者インターナショナル)北海道ブロック会議内
北海道の医療費助成制度を考える連絡会
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