2014年9月3日 障害者政策委員会委員長  石川准 様 DPI(障害者インターナショナル)日本会議 議長 平野みどり 障害者欠格条項をなくす会 共同代表   福島智 大熊由紀子 障害者差別解消法の基本方針および第3次障害者基本計画について 障害者欠格条項に関する要望書  法制度の障壁の除去に取り組んできた「障害者欠格条項をなくす会」は、障害者の権利条約を批准し、差別解消法、改正雇用促進法の施行準備に入っている今、新しい法律にふさわしい試験の共通的なありかたを明らかにするために、全ての都道府県・指定都市・中核都市について、2013年度の障害者を対象とする採用試験案内と受験申込書の調査結果を報告書にまとめた(補註1)。  都道府県、指定都市、中核市あわせて109のうち108の地方公共団体で、障害者を対象とした職員採用試験(別枠採用試験)が実施されたことがわかった。しかし大部分が制限的な受験資格を設けていることが明らかになった。試験総数(207)の71%が「自力で通勤できること」を、同じく89%が「介護者なしに職務の遂行が可能な人」を受験資格としており、「活字印刷文に対応できること」も51%を占めている。そして、点字や拡大文字、音声PCの使用、手話通訳、文字通訳などを想定していない試験が、それぞれ大きな割合にのぼっていることも明白になった。  改正雇用促進法の施行にむけて「基本的な考え方」と「募集および採用時における合理的配慮の提供」が大きな課題となる中で(補註2)、民間に率先する立場である公務の、かつ、障害者を採用しようという試験が、このような状態であることは、非常に大きな問題であり、権利条約および差別解消法の趣旨からも逸脱している。  政府において障害者欠格条項見直しの対象とされた法令の多くは2001年前後に相対的欠格条項に変わったが、相対的欠格条項として残されているために、就学や就業の拒否、試験や学校や職場における合理的配慮の提供が特に遅れている。そして見直し対象の法令にとどまらない広汎な法制度、社会の障害者観に強い弊害をもたらしている。  昨年度に開始した第3次障害者基本計画は、9-(4) の「国家資格に関する配慮等」で、「各種の国家資格の取得等において障害者に不利が生じないよう,試験の実施等において必要な配慮を提供するとともに,いわゆる欠格条項について,各制度の趣旨も踏まえ,技術の進展,社会情勢の変化等の必要に応じた見直しを検討する」としている。そして「国の機関や地方公共団体等に対しては,民間企業に率先垂範して障害者雇用を進める立場であることを踏まえ,適切に指導等を行う」ことも定めている。  第3次障害者基本計画を推進し、障害者差別解消法の2条(社会的障壁の除去)、5条(社会的障壁の除去の実施)7条(行政機関等における障害を理由とする差別の禁止)を施行していくために、次の4項目を要望し提言する。 1、差別解消法の基本方針への記述を 差別解消法の基本方針の留意事項として、条約・差別解消法の趣旨に照らして欠格条項の見直しを継続して取り組む方針を明記することを要望する。 2、試験の共通的な指針を策定して実施を 試験案内、受験申込書等について、省庁を横断した共通的指針を定め実行に移す必要がある。「障害者欠格条項をなくす会」が地方公共団体の試験の調査に基づいて提案している「試験案内のチェックポイント」や「こうあってほしい受験申込書」の内容を反映することを要望する。 3、試験について国・地方公共団体による実態と課題の把握と公表を 現行の国家資格試験、公務員試験の、障害者の受験について、受験資格等における制限の有無、受験の際の実際上の合理的配慮の提供の有無と内容、合否および採用人数などの把握と公表を行うことを提言する。 4 通勤と職務遂行に使える人的援助の制度を 現在の介助制度は、通勤時や職場での介助には使えないか極めて貧弱である。通勤や職務に毎日使える国レベルの人的援助の制度がほぼ存在していないことが、合理的配慮の提供をしていくうえでも、大きな課題になっている。神奈川県の職場介助者制度のように独自の制度をもって取り組んでいる例や、「自力通勤の可否は問わず、勤務にあたっては、適宜必要な支援を行うこととします」と試験案内に姿勢を明記している明石市のような例もあるが、地方公共団体を支え全国的に推進するためにも、全国どこでも通勤や職務に使える人的援助の制度を国として設けることを要望する。    今後さらに、障害当事者参画によって省庁を横断した取組が不可欠であり、とりわけ内閣府及び政策委員会の機能に期待するものである。 以上   補注 1)  「地方公共団体の障害者職員採用試験 受験資格と合理的配慮の想定について−全都道府県・指定都市・中核市 2013年度夏秋期試験の調査報告書」2014年4月発表。全文を、障害者欠格条項をなくす会ウェブサイト上で公開している。この要望書の添付資料にダイジェスト版がある。 2)  2014年6月に発表された「改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止・合理的配慮の提供の指針の在り方に関する研究会報告書」の2「差別の禁止に関する指針の在りかたについて」、3−(3)「募集及び採用時における合理的配慮の提供について」等に記述されている。