「成年後見制度利用促進基本計画の案」に盛り込むべき事項に関する意見


パブリック・コメント 2017年2月17日付
「成年後見制度利用促進基本計画の案」に盛り込むべき事項に関する意見
障害者欠格条項をなくす会


2(1)基本的な考え方
意見:成年後見制度そのものの根本的検討を
 「基本的な考え方」にも記述されている、「ノーマライゼーション、自己決定権の尊重の理念に立ち返る」ことはもちろんのこととして、現在求められていることは、日本も批准した障害者権利条約第12条「法律の前にひとしく認められる権利」と一般意見(1号意見)に照らして、成年後見制度そのものの評価と今後についての根本的な検討をおこなうことである。権利条約の委員会に提出された第一回政府報告書にも内閣府障害者政策委員会指摘として「意思決定の支援及び法的能力の行使を支援する社会的枠組みの構築が急務である(パラ83)」と述べられている。
 成年後見制度発足後に、障害者権利条約が成立し、2014年に日本も条約批准したことを踏まえて、根本的な検討がなされなければならない。
意見:個別支援の法制度の充実を
 その人自身がどこでどのように暮らしたいかに沿って、意思決定の支援を含む必要な個別支援を提供することを、法制度の基本におかなければならない。社会生活のなかで「お金、財産を管理する」ことに困難や不安がある人は少なくないが、地域の障害者関係者団体や支援者が上記の考えに基づく支援を提供して無理なく生活ができているケースも多数ある。成年後見制度はどう運用したとしても幅広く権利を奪うことになる制度であるため、これを縮小し、個別支援を充実させることが世界の潮流となっており、障害者権利条約も求めていることである。従来、個別支援の法制度に重点をおかず、障害のある人を権利なき人として法によって社会生活活動から除外し、障害のない人とは異なる人生のレールを敷き、施設等に集めてきた。国内法整備と権利条約批准などこの間に取り組まれてきているが、根強い差別的な障害者観と法および社会制度のありかたを根本から見直し転換すべき時である。

2(2)今後の施策の目標等
意見:欠格条項等の権利制限の除去を
 下記の事例は氷山の一角であり、権利侵害の状況が幅広くあることから、成年後見制度利用者に対する欠格条項をはじめとした権利制限の除去の取組が急務である。目標(エ)に「成年被後見人等の権利制限に係る措置を見直す」とあるが、既存の法律の関連する欠格条項を調査して一括的に除去する措置が必要である。
 成年被後見人・被保佐人に対する欠格条項について「障害者欠格条項をなくす会」で調査した結果(詳細データ公開済)、2002年145法令、2009年193法令、2016年211法令と増加の一途である。
(事例と法の欠格条項) 知的障害者に限っても1400名以上が公務で働いているが、公務員法の欠格条項のために、成年被後見人・被保佐人は受験もできず、後見利用すれば失職する。実際に役所で長年働いてきて「官職につく能力」があり、本人の状況には変わりがなく、お金の管理の必要から被保佐人となって直ちに失職してしまった人がいる。公務員法の欠格条項(国家公務員法第38条1項、地方公務員法第16条1項)は、国・地方公共団体においても障害者雇用が進められてきたこととも明らかに矛盾する。

3(2)権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり
意見:「日常生活自立支援事業等からのスムーズな移行」への大きな懸念
 ウ)c「日常生活自立支援事業等関連制度からのスムーズな移行」は、仮に計画に掲げたとき、成年後見制度の外で現在できていることをも、成年後見制度内へ移行する作用をしないか、大きな懸念がある。本来行なうべきことは、現行の成年後見制度を利用しなくてもできることを、「日常生活自立支援事業」等の関連制度を充実することで更に広げていくことである。計画案のように掲げるのは不適切ではないか。

3(5)国、地方公共団体、関係団体等の役割
意見:障害者関係者の当事者参画を重点事項として記述を
 障害者権利条約の国内監視機関に相当する「内閣府障害者政策委員会」においても検討がされるべきことである。かつ、「当事者抜きの検討」にならないように、成年後見制度について検討する委員会、審議会等においても、支援をえて地域社会で生活している当事者やその支援者、成年後見制度利用にかかわる権利侵害を経験してきた障害当事者やその関係者の参画のもとで、今後の検討がされるべきである。

3(7)成年被後見人等の権利制限に係る措置の見直し
意見:既存法の欠格条項等の調査と除去の措置を
 成年後見制度利用者に対する権利制限の除去にむけた取組が求められている。そのため、既存の法律等についての調査把握、除去にむけた措置について、本基本計画に入れることが不可欠なことである。総務省の「法令データ提供システム」等を用いて2016年に調査した結果(詳細データ公開済/障害者欠格条項をなくす会調査)、成年被後見人・被保佐人に対する欠格条項については、2002年145法令、2009年193法令、2016年211法令と増加の一途をたどっている。


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