神奈川・埼玉・東京の各自治体宛に地方条例欠格規定撤廃の要望書


要望書本文の一例(差し出し先によっていくらか内容は異なっています)
2000年9月1日
東京都 〇〇区長 様

障害者欠格条項をなくす会
共同代表 牧口 一二・大熊 由紀子

DPI(障害者インターナショナル)日本会議
議長 山田 昭義

全国自立生活センター協議会(JIL)
代表 樋口 恵子
障害者に対する公的施設の利用制限規定の撤廃を求める要望書

1 障害者欠格条項をなくす会は、障害種別・立場をこえて、障害を理由とした欠格条項(資格制限)撤廃を目的に、昨年5月に結成した全国組織です。現在進行中の「欠格条項見直し−法改正」に、障害者自身の体験・智恵、海外の先例などを反映させるよう、取り組んでいます。

 DPI(障害者インターナショナル)は、障害者の完全参加と平等、人権確立を目指して活動している国際組織で、国連経済社会理事会、WHO、ILOなどの国連諸機関での諮問団体として位置づけられており、国連総会のオブザーバー資格を有してる団体としてさまざまな活動を展開しております。DPI日本会議では、「誰もが使える交通機関を求める全国交通行動」を呼びかけ、毎年全国30 ヶ所のべ3000人を超える、文字どおりの大行動を作り出してきました。この行動は、鉄道駅舎のエレベーター整備指針策定やノンステップバスの運行、路線バス付き添い乗車通達の見直しなど、交通機関のアクセス改善の気運を高め、このたびの「交通バリアフリー法」制定に際し大きな影響をもたらしました。また、まちづくりの分野でも、全国各地で「福祉のまちづくり条例」制定運動に取り組んでいます。

 全国自立生活センター協議会は、介助を必要とする人たちも、親元という庇護の場でなく、施設という管理された場でもなく、自分の選んだ地域で生活できるよう支援している自立生活センターが集まってつくっている組織です。全国で90 団体が加盟しています。自立生活プログラム、介助者派遣サービス、ピア・カウンセリング、移送介助などのサービス提供と権利擁護などの活動を、障害当事者の立場から行っています。

2 昨年8月、周知のように障害者団体等からの欠格条項撤廃を求める声を受けて、総理府障害者施策推進本部において「障害者に係る欠格条項の見直しについて」(以下、対処方針)が決定されて以後、各関係省庁では「対処方針」に基づく見直しの検討が行われています。

 障害者に係る欠格条項とは、「免許・資格又は業の許可等に当たり、当該業務又は行為を行うために必要と認められる知識・技能の他に身体又は精神の障害を理由として、免許・資格、許可を与えず又は行為を禁止することを定めた規定等」(総理府障害者施策推進本部)をいいます。こうした用語規定に基づいて、総理府が示している「障害者に係る欠格条項の見直し」の課題の一つに障害を理由とする「公的施設の利用制限」があります。

3 この間、私たち3団体の取り組みとして、地方自治体の条例及びその施行規則等における障害者の公的施設の利用制限に関わる実態調査を行ってきました。その結果、公的施設の入場・利用または地方議会や公的委員会等の傍聴に関して、とりわけ精神障害者に対しては、その対象から除外する差別規定が多く存置されていることが判明致しました。

4 東京都内の自治体においては、私たちが公的施設の利用制限に関する実態調査を行った結果、精神障害者を指す、または指すことにつながる規定によって、図書館や公民館等の公的施設の利用または議会や教育委員会・公平委員会の傍聴等を不当に制限し、門前払いすることになる差別規定が決して少なくないことが明らかになりました。こうした実態調査によって、貴区では、図書館の入場・利用の際に精神障害者を除外する規定を設けていることが明らかになっています。(別紙参照)

 貴区の図書館利用に関する精神障害者へのこのような差別規定は、何らの合理的理由もなく、精神障害者に対する危険視を前提としたものであり、精神障害者に対する不当な差別観と偏見をますます助長することにつながるとともに、法の下の平等を定めた憲法14条に明らかに反すると言わなければなりません。

5 地方自治体の条例で、公的施設の利用などを障害を理由に制限することは、「障害者の自立と社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動への参加を促進することを目的とする」という障害者基本法(1993年)の趣旨ともまったく相いれません。

 障害者プラン〜ノーマライゼーション七ヶ年戦略〜(1995年)では、「心のバリアを取り除く」ことがうたわれ、「障害者に対する差別や偏見を助長するような用語、資格制度における欠格条項の扱いの見直しを行う」、さらに「各種資格制度における精神障害者の欠格条項の見直しを推進する」と述べられています。

 また、1988年以降から今日に至る「精神保健福祉法」は、「精神障害者の人権擁護の徹底」「社会復帰の促進、特に地域における精神障害者の生活支援の体制整備の必要性」という基本的考え方から改正が行われています。

6 こうした状況を踏まえて、国をはじめ都道府県・市・区・町・村などの地方公共団体も精神障害者が社会生活へ適応できるよう努力すると共に、そのための諸施設の充実に努めること等が要求されます。

 にもかかわらず、貴区において現在に至るまでこのような精神障害者への不合理な差別規  定が放置されていることは、貴区の精神障害者をはじめとする障害者施策への姿勢と認識に重大な問題が含まれていることを意味します。

7 以上の理由から、私たちは、下記の点について要望いたします。

(1)図書館の入場・利用に関する精神障害者への差別規定について、貴区の見解を明らかにしていただきたい。

(2)精神障害者に対する差別規定を放置しつづけてきたことについて、貴区の反省を明確にし、同差別規定を速やかに撤廃していただきたい。

※上記の要望事項(1)(2)に関する貴区としての回答または対応について、今月14日までにご連絡[事務局担当者:金(きむ)まで]下さるようお願いいたします。

以上


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