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第6回DPI世界会議札幌大会報告集 世界の障害者―われら自身の声

 

 

第20回DPI日本会議全国集会 報告

DPI日本会議事務局

全体会




 まず、外務省人権人道課の小川秀俊首席事務官に「障害者の権利条約策定の動向〜現状と課題」という特別報告をしていただき、その後、小川さん、DPI日本会議の東俊裕、小森猛各常任委員がシンポジストをつとめ、金政玉のコーディネートによる、「障害者を取り巻く状況と権利条約に期待するもの」というテーマのシンポジウムを開いた。
 三重県身体障害者福祉連合会の山本征雄会長、野呂三重県知事(代読を太田総括室長)より暖かいご挨拶を賜り、自治労の中西満さんより力強い連帯のお言葉をいただいたあと、小川さんの特別報告を聞いた。小川さんは、主に、障害者の権利条約第3回特別委員会における議論についての考え及び今後の展望や課題について、外務省の立場などからお話してくださった。
 この中で、バンコク草案策定等に関するDPI日本会議をはじめとする日本のNGOの今までの貢献を述べ、第3回の特別委員会の交渉内容は、政府から見れば非常に厳しい交渉となってきているが、まとまらないものではない。実質的な条約交渉は始まったばかりであり、第4回以降の特別委員会でまとめていく作業が行なわれる。重要な点として、新条約はすぐに実行に移せるかどうかという点に関して各国の様々な事情もあり、即時的に実行すべき自由権と、漸進的に実現する社会権の両方をカバーしたものになるべきである、との政府側の立場を述べた。重要な点・課題としては、「差別や障害の定義」「合理的配慮」「強制収用」「教育」「雇用」などをあげて、各国の事情の違いを考慮しての合意の重要性を強調し、国際人権規約のように自由権と社会権の義務の書き分けの必要性を訴えた。
 特別報告に引き続いて行なわれたシンポジウムでは、日々の生活と条約のつながりを確認する作業を試みたといえる。まず政府代表団に入っている東は、自由権を保障するために社会権ができた歴史的背景と、条約の権利性の大切さを強調した。社会保障型の施策だけでは障害者が保護の対象になってしまい、差別を新たに生み出してしまうことも指摘し、「合理的配慮」はそれがなくては差別である、という規定が必要になると指摘した。小森からは重度障害者が地域生活をする中で、がまんがまんではなく、生活上の基本的な権利が守られる生活をしたいという生活者の切実な訴えがあった。小川さんは、差別はすぐになくすべきであるが、社会権的に財政負担が必要なものについては、すぐに権利を実現するのは簡単ではないという認識が示された。これをうけて、東からは今まで障害者の施策が行政の裁量の問題になっていて、差別的な状況がなかなか解消されないとの話がされた。また会場からも活発な質疑応答がなされた。
 政府は、財政的な支出につながるものについては慎重な態度であり、私達の主張に全面的に同意することはなく、課題も多い。しかし、外務省の条約交渉を行なっている部署の方が当事者の声を聞き、双方が議論することは非常に重要である。条約は原則として政府間で交渉・締結するので、運動側としては政府関係者にきちんとインプットしていくことが大切であり、そうした機会をできるだけ多く作っていく必要性がある。最後に誠実に受け答えしていただいた小川さんにこの場で感謝したい。
 
 


分科会1.交通・まちづくり「 交通バリアフリー法の成果と課題」
 


 当分科会は、交通アクセスに関心をもち、実際に利用上の不便に遭遇している人たちが40名ほど集まり、議論には体験に基づく具体的な報告が多く含まれた。
 はじめに小澤氏より、交通バリアフリー法制定までの流れ、法律の目標や内容、現在のバリアフリー状況等、実績を記した資料を基に説明があった。その中で個人的な見解として、交通バリア対策は昨今ようやく形になってきていたが、立ち遅れている事実は否めないので、行政と利用者双方のバックアップが不可欠であり、利用者の声は最大限に取り入れていくと述べられた。また、公共交通機関の利用に関する大きな問題のひとつであるハンドル形電動車椅子の扱いについての説明があった。これまでは共通のルールがなく、鉄道業者がハンドル形電動車椅子を「スクーター」と認識したために「乗車拒否」の対応になっていたが、国土交通省で利用実態の調査・検討が行われて現在は当事者とその他の利用者との合意への道が開かれたところとのことである。
 川内氏からは、来年に予定されているバリアフリー法の見直しに向けた重要事項、基本構想・移動円滑化基準に関する重要事項が具体的な例をあげて説明された。ポイントとして、バリアフリー法が「福祉」として整ったために「権利を守る」という視点が欠けている点をあげ、見直しには「権利保障」としてのアプローチが必要であると述べられた。車椅子利用者が鉄道を利用するときに、場内に「車椅子のお客様が5両目にいらっしゃいます。名古屋までです。」と放送されプライバシーが守られないという例や、駅員が馴れ馴れしく話しかける例をあげると、フロアからは笑いが漏れた。また、バリアフリー化が遅れているバスの問題、特にバリアフリー法に入っていない観光バス・高速バスについても、具体的な改善点が示された。さらに視覚障害・聴覚障害を持つ人への情報保障についても整備の必要が述べられた。
 野口氏からは、観光地の伊勢志摩にてバリアフリーの情報が発信されていない現実を改善するためのセンターの活動、実際に直面した困難が報告された。都市部と比べると圧倒的に少ない低床・リフトバス、無人駅の問題がある一方、情報を出したことで観光客が増え、町に障害者が出かけるようになって、地元の駅やバスの対応がよくなるという効果があったという。
 フロアからは、交通問題に非常に詳しい今福氏から、ここ1年以内に起こった事故が数例報告された。それらは、車椅子対応のエスカレーターでの転倒、ノンステップバス乗車時のバック横転、チェアメイトからの転落など人的事故と言えるものである。これらの事例を踏まえ、バリアフリー法は、安全を前提とした基準に改正されるべきであり、そのためには当事者の視点が不可欠であることが強調された。また、ハンドル形電動車椅子の現実にある様々な制限の問題、さらに2005年の見直しに向けた今後の課題が整理され、特に障害当事者の審議会への参画と、差別禁止法に「移動の権利」を入れるようにということが主張された。
 フロアとの質疑では、駅のスタッフの対応の問題、基本構想の基づく計画の策定がない市町村の問題、バスのバリアフリー化に関する問題など、特に国土交通省への質問が次々とあがった。
 最後にまとめとして、野口氏からは、新しいバスを買わず中古バスを買うことが多いためにバリアフリー化が進まない問題、離島を結ぶ船と桟橋のバリアの問題など地方が抱える問題があげられ、都市部との差を埋めていくために数字だけではなく実態をみて行政にあたってほしいと述べられた。
 川口氏は、バリアフリー法は2010年が目処になるのに、現段階で基本構想がほとんどできていないことがあげられ、国に全てを任せるのではなく、国・自治体・事業者のどこにアプローチするかを我々も見極めていかなければ先に進まないと指摘された。
 小澤氏からは、バリアフリーの問題は情報公開によって改善させていくとの姿勢が示された。アドバイザー会議、計画策定のためのセミナー開催と専門家の派遣、計画未策定の自治体名の公表、バスについては全事業者のバリアフリー状況の公開などが具体的な例である。そして2005年11月に予定されている見直しで、運行面の安全だけでなく、運用面での対応など人の安全を守る対策を取っていくことをあげ、できることから確実にやっていく姿勢であると述べられた。最後に、6月21日の経新聞で報道された「交通バリアフリー法とハートビル法を廃止して新法を作る」という記事については、事実ではなく記者の思い込みによる記事であることがはっきりと確認された。
 


分科会2.地域生活支援「支援費制度と介護保険についての情勢報告」
 


熱気に包まれた会場
「支援費制度と介護保険についての情勢報告」がテーマだった第2分科会は、今、日本の障害者を取りまく問題の中で一番ホットなものであるだけに、参加者も200人以上をかぞえ、会場は熱気に包まれた。
まず、DPI日本会議の新たな事務局長となった尾上より情勢の報告が大体以下の内容でなされた。
・これまで、支援費と介護保険統合問題について、DPI日本会議など主要障害8団体は厚労省と話し合いをもってきたが、厚労省側からは介護保険統合についての具体像が全くみえず、社会参画や自立生活の実現といった理念ではなく、三位一体改革など、財源論での論議に終始した。
・支援費制度は、ノーマライゼーションを謳いながら施設を重視してきた今までの障害者施策の矛盾を照らし出した。支援費制度はまだまだ拡充すべきものである。
・6月25日の社会保障審議会障害部会の報告で、介護保険の見直しはすぐには行なわないという発言がされた。
 この後の質疑応答の中で、会場から、8団体の一つである全日本手をつなぐ育成会が「支援費制度と介護保険との統合は必然」という意見を出したこともあり、「8団体が裏で厚労省ととりひきしているのではないか、交渉の様子を外に中継するなどもっと透明性を」といった意見が出されたが、これらに対しても「できるだけ多くの人が交渉に参加できるように努力する」との返答がされ、「現行介護保険との統合を阻止するための今後の運動の山は、8月後半から9月はじめである」との方針が呈示された。

「統合反対!」―今こそわれら自身の声を!
 この後、シンポジウムが開かれた。シンポジストは、三重県身体障害者福祉連合会会長の山本征雄さん、CIL津代表の大田真也さん、ピープルファースト東京の佐々木信行さん、こらーるたいとうの加藤真規子さんで、助言者に定藤記念福祉研究会の北野誠一さんを迎え、コーディネーターはDPI日本会議の平野みどりが務めた。
 山本さんは、三重県の現状報告とともに社会保障給付費の国際比較を提示され、日本のGDPに対する支出の低さを指摘し、また、措置制度の格差が解消されていない中での地方の一般財源化はサービスの地域格差を広げるとの憂慮を述べた。
 大田さんは実際に24時間介助が必要だが、CIL津の立ち上げにおいての苦労や日常生活支援で17時間しか獲得できていないということ、地方での自立生活の困難さを訴えた。
 佐々木さんは、支援費制度が介護保険と統合されたら、知的障害のなかまはまた施設に戻ってしまうのでは、というもっともな疑念を述べ、介護保険絶対反対という強い意志が表明された。
 加藤さんからは精神障害当事者として、障害福祉施策からとりのこされた精神障害者の困難をのべて、3障害を一元化した総合福祉法の必要性と介護保険反対を明確に述べた。
 この後、当事者の意見を受けて北野さんから、専門家として支援費制度と介護保険の長所短所を指摘した後、これでは、「がまんの統合」になってしまう、厚労省がもつ2015年の介護保険のイメージにも社会参画が含まれていない、介護保険の専門家は障害者の生活を知らず、きちんと知るべきであるという指摘がされた。会場からも活発な意見表明や質問があった。
 介護保険の問題点は今さらここで述べる必要はないだろう。全く介護保険の未来も見えない中で、厚労省は強引に統合を押し切ろうとしているように思われても仕方がない。踏ん張りどころであるように思う。

 


分科会3.障害者差別禁止法「なぜ障害者差別禁止法が必要なのか」
 


 第3分科会は、午前中の障害者権利条約についての報告やシンポジウムを引き継ぐように、障害者差別禁止法をテーマに行なわれた。この分科会は、障害者政策研究集会や日弁連で作成している差別禁止法要綱案を深める議論ではなく、「なぜ障害者にとって差別禁止法が必要なのか」ということをわかりやすく参加者に伝えることを主眼において行なわれた。参加者は全体で30名強で、DPI日本会議の加盟団体の関係者だけでなく、地元である三重県内の身障・知的障害者の相談員の参加も目立った。
 まず、日弁連から出された障害者差別禁止法要綱案づくりでも中心的に活躍された黒嵜隆弁護士(フロンティア法律事務所)から、なぜ差別禁止法が必要かについて発表があった。黒嵜弁護士は、用意したパワーポイントを使って、教育・就労・移動などの諸場面における差別の実例と、合理的配慮の必要性について説明した。
 その後、午前中に全体会でシンポジストを務めたDPI日本会議条約担当常任委員の東俊裕がコーディネーターとなり、自立生活センターすくらむ(大阪)代表の姜博久さん、愛知重度障害者団体連絡協議会の辻直哉さん、障害者の欠格条項をなくす会事務局長の臼井久実子さんの3名が発表した。
 辻さんは、自らの大学進学時に起きた、定期券を売らない、エレベーターを設置しても時間制限を設けるなど名古屋鉄道とのあいだで生じている出来事を中心に具体的に差別禁止法の必要性を説明した。姜さんは、現在の介護システムが、たとえば通学を認めないという具合に障害者の普通の生活への希望を全体として捉えたものになっていないことを指摘した上で、そぐわない制度を改めていくための手段として差別禁止法が必要だと述べた。日本の法律は上意下達のものが多く、差別禁止法にしても地域に住む障害者が何をしてほしいかを踏まえて障害者運動が作り上げていかないといけないと、これまでの差別禁止法づくりがややもすると一部のメンバーによって進められているという懸念を示した。また、自らが自立生活センターを立ち上げ、地域の人たちと活動していく中で、地域を豊かにしていくための法律として差別禁止法が必要だと訴えた。
 姜さんの発言を受けて、東からは、ADAには「自立生活の権利」という文言はないが、最高裁判例としてアメリカでは不必要な施設収容はよくない、原則として地域で生活するという成果を勝ち取ったことが紹介された。最後に、臼井さんから欠格条項をなくす会の活動が紹介された。日本政府が中途半端ながら見直しを行ったことは、欠格条項が不合理であることを認めたわけで、一定の前進といえる。しかし、相対化しても差別的な考え方が消えたわけではないので、今後も取り組みが必要であるとの認識が共有された。
 質疑では、「医療観察法」に関する質問が出され、東は、差別禁止法ができたときに、あの法律がそのままでいいのかは問われなくてはならないと述べた。また、特急列車で指定席券を購入しても、車いすで車両に入れないため、デッキに居ざるを得ないとの訴えもあった。聴覚障害者からは、業務が遂行できるかを見るためと称して、面接で口を隠した状態で質問をされた例も報告された。プライバシーの問題もあるだろうが、何とか差別事例に関するデータベースが作れないかという声も上がった。
 最後に司会を交代した姜さんから、実態をもっと明らかにしていくことで幅の広い運動作りを進めたいとの意見提起があり、分科会は終了した。
 

 


分科会4.教育「障害児・者の教育は、いま」
 


 最初に森本タツ子氏が、三重の実態を報告した。県内の就学指導実態調査(2002年)によると、障害児130人中障害児学校入学は31人。特殊学級は、91人(通級も含む)。普通学級籍をもち、障害をもたない子どもと共に学び生活している子どもは8人。この数字から、「勉強は特殊学級で、社会性は普通学級で」と学級の役割を限定していることがわかる。共生・共学の意味を同じ敷地を共有することだと勘違いしたり、分けられていることに親自身も疑問をもたなかったり、知的障害をもつ子どもについては「勉強は特殊学級でもしかたない」とあきらめてしまうことがある。この傾向に拍車をかけるように、普通学級で学ぶ障害児に対して徹底して支援が行われず(親が子どもの送迎ができない時には、「学校を休んでくれ」と言われる等)、逆に特殊学級では「特別なサービスが使える」と学校側がメリットをあげつらい揺さぶり、誘導をはかっている。親や子どもの意志を尊重すると言うものの、あからさまな誘導が行われている今の状況では、どうして「共学」が大切なのかをもう一度問い返す必要がある。そうでなければ、障害児の高校進学問題(養護学校高等部への進学は123人中79人)について、障害児の能力の問題として簡単に片付けられてしまう現実に対抗できないという指摘があった。
 次に、吉田智弥さんが奈良県でおきた二つの事柄を分析しながら、運動が抱えている課題について語った。2003年5月天理市の小学校教諭が養護学校との交流教育の事前指導で、障害に関する人権侵害発言をした。この発言に傷ついた小学3年生(養護学校に通っている姉をもつ)が約9ヶ月間学校へ通えなくなった。事件は、校長の自殺という悲劇的な要素も加わったが、一応収束している。事件の問題性を追及しようとする姿勢は、学校、教育委員会、組合に無く、県内で教育問題に取り組んできた人々は新聞報道でこの事件を知った。この点に、奈良県の運動の「貧しさ」(ネットワークの中で差別事件に取り組めない)があらわれていると述べた。同様の問題構造は、養護学校増設を問題でも明らかになった。昨年12月の本議会で、社民党議員1人以外全員が賛成し養護学校の増設は採択されてしまった。養護学校増設を問題視する声がこれまで一緒に活動してきた議員たちから伝わってこなかったので、この請願が出されていたことを情報としてキャッチすることが遅れ、増設にブレーキをかけることができなかった。
 フロアーからの問題提議や質問を受けて、堀さんが特別支援教育について問題点を指摘した。特別支援教育は障害児だけの教育で、障害によってどこで学ぶのかを決められるところに問題がある。今後は、インクルーシブ教育に転換するべきである。そのために今までの教育の見直しを行い、特別支援教育に対抗するために、今何故共生・共学の教育が必要なのかを問い直す必要がある。子ども一人ひとりが様々な違いをもつからこそ学びあうことができ、社会を構成する一員として社会で生きていく力を育む教育が必要になるだろう。
 分科会の最後に、障害児・者を区別しない運動としてDPI日本会議が今後取組んでいくことを確認し、終了した。