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活動内容
政策提言活動
障害者の権利条約国内履行への取り組み
2006年12月の権利条約採択を受けて、2007年度は権利条約の国内履行に焦点を当てて活動を始めた年となった。DPI日本会議は、JDFの組織改変に伴い、政策委員会・条約小委員会の事務局団体として、条約の国内履行に関する事業を取りまとめてきた。小委員会委員長は東俊裕条約担当役員、委員長代理を尾上浩二事務局長が担当している。
まず、9月28日に日本政府が条約に署名し、それに伴う日本政府仮訳文が公表された。仮訳文は多くの問題を抱えており、JDFとして署名に関する声明と仮訳に対する意見を発表した。そして仮訳文の分析を行い、議員や関係各方面に問題提起を継続的に行ってきている。10月には障害者権利条約推進議員連盟の総会が開催され、仮訳文に対して意見を表明すると共に政府の姿勢を追及した。
また、それまで重ねてきた政府との意見交換会も継続的に行っており、8月には関係11省庁が出席する意見交換会を、2月には内閣府に関連する項目について、内閣府との個別の意見交換会を開催した。また、意見交換会毎に意見書作りを行っている。これらの意見交換に伴って小委員会も4度開催した。
さらに、2月には名古屋において「JDF地域フォーラムin東海」を、3月には札幌において「JDF地域フォーラムin北海道」をJDFとして初となる地域フォーラムを開催し、本格的な条約の啓発活動を開始した。両フォーラムとも当該地域におけるJDFの構成団体が実行委員会を組織し、事務局団体はDPI日本会議の加盟団体が担い、成功裏に終えることができた。
DPI日本会議としては独自に、解放出版社より「障害者の権利条約でこう変わるQ&A」を権利条約の啓発活動の一環として出版した。初版は3,000部であったが、すでに1,000部の増刷を行っており、関心の高さが伺われる。
障害者差別禁止法に関する取り組み
2006年10月、全国で初めて自治体レベルで障害者差別をなくす「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」(以下、千葉県条例)が制定され、2007年3月、日本弁護士連合会においても差別禁止法案が策定された。国際的には、同年3月、韓国において「障害者差別禁止及び権利救済等に関する法律」(以下、韓国差別禁止法)が実現した。
DPI日本会議が事務局を担当している「政策研」の中に設置されている「障害者差別禁止法作業チーム」(以下、「政策研作業チーム」)では、2004年12月に「障害者差別禁止法要綱案」(第3次案)を発表し、その後は、わかりやすく理解できる「当事者がつくる差別禁止法」(簡略版)の冊子を発行するなど普及に取り組んできた。差別禁止法の必要性を当事者自身が理解し、その制定を求める動きをつくっていくために、JIL人権委員会と共にセミナーや集会を行ってきた。
その後、市民団体の政策立案をサポートしている市民政調が、「障害者差別禁止法検討プロジェクト」(2006年8月)を設置することになり、政策研作業チームでは、市民政調の差別禁止法検討プロジェクトと協力して、当事者の視点にたった「障害者差別禁止法市民案(仮称)」をつくるための検討作業を行っている。こうした中で、10月、国会で超党派の「障害者差別禁止法推進議員連盟」発足の動きがあり、国会レベルでも差別禁止法制定に向けた議論を巻き起こしていくことが期待されている。
障害者自立支援法に関する取り組み
「自立支援法」成立・施行後も「地域生活をあきらめない」との基本姿勢のもと取り組みを進めてきた。全国大行動実行委員会として、7月と2月の2回に渡って厚生労働省に対する交渉と行動を実施した。また、昨秋には、同実行委員会で障害者ヘルプ事業所調査を呼びかけ、人材不足がサービス提供を難しくしている深刻な状況を明らかにするとともに、重度訪問介護についての早急な改善を提起した。
参議院選挙を控えた7月には日本障害者協議会(JD)や全日本ろうあ連盟等とともに、権利条約と「自立支援法」に関する政策フォーラムを開催した。さらに、10月には、「今こそ変えよう!障害者自立支援法 10.30全国大フォーラム」が開催され、全国から6,500人の当事者・関係者の参加のもと、全政党出席のシンポジウムが行われた。
そうした一連の粘り強い活動や参議院選挙の結果を受けて、昨年秋には民主党が「自立支援法改正案(応益負担廃止法案)」を参議院に提出するとともに、与党も「自立支援法の抜本見直し」を掲げるに至った。
2009年の見直しとそれまでの緊急措置の二本立ての内容を中心にした「与党プロジェクト報告書」が、12月にまとめられた。緊急措置は事業所の経営基盤の強化と利用者負担が中心となっている。この内、利用者負担について「世帯単位から個人単位」にした点やケアホームでの個別ヘルプ利用の拡大がなされている点等については、DPI日本会議からの提起も一定の影響を与えている。また、「介護保険との統合を前提とせず検討」としている点や、年金引き上げや住宅手当について言及していること等、今後の見直しに当たって押さえておくべき点もある。だが、地域生活支援事業化による移動支援の地域間格差の問題や重度長時間サービスの問題はそのまま残っている。また、「自立支援法」の附則にもある「障害者の範囲」の見直しについては、極めて不十分な記述にとどまっている。
「特別対策」「緊急措置」と毎年何らかの対策が行われること自体異例であり、それだけ「自立支援法」の影響の深刻さを物語っている。いよいよ「自立支援法」の3年後見直しが日程に登る中、「自立支援法」の一部手直しではなく、地域での自立生活を基軸にした新たな制度の創設が求められる。
2007年春に行った「自立支援法110番」以降も、「障害者と人権弁護士ネットワーク」と継続した打合せを行い、「自立支援法」に関する司法的な取り組みに向けた準備を進めてきた。
また、「退院支援施設」の撤回とピアサポート等を含めた、「まっとうな」地域移行の仕組みを求めた取り組みも継続して行ってきている。
障害者の所得保障に関する取り組み
2007年度も障害者の所得保障のあり方に関して、論議が交わされてきた。厚生労働省内に設けられた「障害者の所得の確保に関する検討チーム」からは、就労対策以外の方向は出されなかったが、「自立支援法」の見直しに関連して、自民党、公明党の与党プロジェクトからは、障害基礎年金の引き上げ、社会手当としての住宅手当の創設等の内容の方針が示された。また、DPI日本会議として、積極的に課題の整理と、政策提起を行った「障害者の所得保障に関する研究委員会」(全社協障害者団体連絡協議会)も、2年間の検討を踏まえた政策提起を行った。その内容としては、障害基礎年金の引き上げ、無年金障害者の解消、各種給付基準の抜本的な見直し、住宅手当を含む新たな社会手当の創設等を含むもので、DPI日本会議のかねてからの主張が盛り込まれたものであった。
DPI日本会議も協力して行われた国立社会保障・人口問題研究所の「障害者の所得保障と自立支援施策に関する調査研究」は2007年度が最終年となり、障害者の生活と所得保障の実態に関するデータが明らかにされた。また、この研究チームは加盟団体である「障害者の自立と完全参加をめざす大阪連絡会議(障大連)」の協力のもとに、9月に大阪において、所得保障問題についての集会を盛況のうちに行った。
厚生労働省が2007年秋に突然打ち出した、生活保護基準の一律引き下げに関して、DPI日本会議としては、「反貧困ネットワーク」の人々とともに、引き下げを阻止する行動に取り組み、財政抑制を第一義とする厚生労働省の引下げ案をひとまず押し返すことができた。
原則統合・インクルーシブ教育の実現に向けた取り組み
2007年度の教育に関する取り組みは、2006年度よりDPI日本会議として執筆協力していた日本教職員組合の障害児教育部編「特別支援教育からインクルーシブ教育へ実践のための提案と指針」が発行されたことに続いて、同じく2006年度より国民教育文化総合研究所に設けられたインクルーシブ教育研究委員会にDPI日本会議からも当事者として委員を出し、インクルーシブ教育の実現をめざす研究活動にも参加し、その成果は2007年9月に報告書としてまとめられた。
DPI日本会議内部としての取り組みは、権利条約採択を受けて、認識の共有化を図るための討議を10月に行い、障害者の地域での自立生活を広げていくための前提としての障害児教育であるべきとの共通認識を確認した。
しかし、9月に発表された日本政府による条約の仮訳は、インクルーシブ教育を「包容教育」と訳したり、インクルーシブ教育として目指すべき一般教育制度に特別支援学校での教育が含まれるような意味あいをもたせた日本語訳がなされており、日本の障害児教育においてインクルーシブ教育へ向けて取り組まれるべき国内制度の転換について危ぶまれる状況となっている。それに対して、障害者の地域自立にとってインクルーシブ教育への転換が必要不可欠と考える立場から、12月に、DPI日本会議の三澤了議長をはじめとする共同代表を立てて「インクルーシブ教育推進ネットワーク」の取り組みが開始された。
交通アクセスに関する取り組み
「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(以下、バリアフリー新法)が制定されてから、約1年半が経過した。新たな法律がめざした、交通施設にとどまらない、建物や道路までを含む社会インフラの整備、ならびに住民参加を中心とした重点整備地区の基本構想策定に関しては、その実効があがっているとは言えない。また、われわれがもっとも重要な問題として捉えている「移動権(利用権を含む)」の確立、ならびに「乗車拒否や利用拒否」の禁止は、課題として残り続けている。
DPI日本会議としては、こうした状況の改善に向けて、2007年度において新たな取り組みを開始した。その一つとして、それぞれの地域で基本構想の策定を提起し、当事者としての意見提起をすることのできる障害者を育成することを目的として、JILならびに交通エコロジー・モビリティー財団の協力のもとで11月と3月、「バリアフリー当事者リーダー養成研修」をおこなった。この研修事業は、2008年度も引き継がれることとなる。
「移動権」の確立、「乗車・利用拒否」の禁止にあたっては、権利条約の完全実施に向けての動きを踏まえて、積極的な問題提起を繰り返してきた。また、乗車拒否のもっとも顕著な事例である「ハンドル型電動車いす」の鉄道利用に関しては、国土交通省が設置した検討会議に、DPI日本会議から当事者側委員として参加し、原則的にすべての車両の利用を認める立場からの意見提起を行ってきた。視覚障害者の駅ホームにおける安全確保のための施設として求め続けてきたホームドア・可動式ホーム柵に関しては、「鉄道駅におけるホームドア等の整備の促進に関する委員会」を設置する等、ようやく具体的な動きが見え始めている。これらのリーダー養成事業や各検討委員会の成果は、まだまだ不鮮明であり、当事者主体のバリアフリー環境整備や乗車拒否の根絶、視覚障害者の安全確保等に関しては、今後とも継続的な取り組みが必要となる。