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第6回DPI世界会議札幌大会報告集 世界の障害者―われら自身の声

活動内容海外の障害者に関する協力等の事業第2回国連障害者の権利条約特別委員会


『日本政府の見解』

この見解に対する意見はこちら

国連事務局より要請越した「障害者権利条約」に関する我が国の意見については、以下の通り提出ありたい。

1.総論

 我が国は、国際社会における障害者の権利の擁護と促進の必要性を認識しており、右を達成するために今後検討されていく国際的な法的文書については、普遍的価値を有し、効果的に機能するものとなるよう、国際社会の可能な限りの幅広い支持を得ることができるような内容を持つものとなることが重要であると考えている。この観点から、特に次の2点に留意することが必要であると考える。

(1)既存の人権条約との重複の回避、整合性の確保

 新たな法的文書はその形式如何に関わらず、既存の人権条約の核であるA規約及びB規約を含む人権6条約やこれらの条約の条約体の合理化簡素化の流れと完全に両立すべきである。従って、既存の人権諸条約に規定されている各権利に関し、障害者のそれらの権利の実現にあたっての制約を克服し、さらに促進させることを大きな柱とすべきである。

 障害者の権利の実現はおおよそ全ての社会分野に関連することから、人権諸条約以外の既存の国際条約、または各国の国内法令等との関連について、十分整理することも必要であり、障害のない者と同等の権利の実現が進んでいる分野と今後実現を促進していく必要がある分野について整理を要する。

(2)人権条約体改革の議論との関係

 既存の人権諸条約の下で各締約国は、既に、政府報告の作成等膨大な作業を抱えている。政府報告の審査を中心とした人権条約体のあり方については、累次の機会に議論されているところであり、今後検討されていく法的文書においても、右議論を踏まえ、政府報告書の作成、審査プロセスを設ける必要性について綿密に検討する必要がある(既存の人権諸条約の報告に障害者の権利の実現のためにとった措置を含めるとする方法も一案)。


2.各論

(1)目的
 我が国の障害者基本計画は「ノーマライゼーション」(障害者を特別視するのではなく、一般社会の中で普通の生活が送れるような条件を整えるべきであり、共に生きる社会こそノーマルであるとする考え方)の理念に基づき行われている。「ノーマライゼーション」を目指すために、障害者の自立を促進し、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動への参加を促進することを本件法的文書の目的の柱として提案したい。

(2)盛り込むべき原則

 新たな法的文書は、B規約第2条に規定されている「平等原則」を実現させるものでなくてはならない。また、経済的、社会的及び文化的権利の実現にあたっては、A規約第2条で認められている「漸進性を許容」する旨の規定を設ける必要がある。

(3)範囲

 上記(1)の「ノーマライゼーション」を目指すために、各締約国が、(イ)障害者自身がもつ制約の克服のため、及び(ロ)社会生活において障害者にとっての各権利の実現にあたりソフト・ハード面における障壁の除去のために、いかなる措置を講ずる必要があるかについて国際的な基準を設けることが本件法的文書の内容となるべきものである。

(4)定義

 障害者の定義については各国様々であるので、多くの国が受け入れられるような定義、若しくは各国の国内体制に委ねる余地を残すべきである。

(5)要素

 実体的規定に何が含まれるかについては、これまで国連で作成された決議・ガイダンス、各国における実施状況を踏まえて決定していくことになる。尚、実体的規定の中心のひとつになる労働者の雇用問題については、障害者の権利保護を達成する手段として障害者雇用差別禁止法制が全面に出ることが考えられる。しかし、障害者雇用割当制度と障害者雇用差別禁止法制はその基本理念の違いから両立し難いものであり、障害者雇用割当制度のような積極的措置は障害者差別には当たらないことを条約に明確に位置づける必要がある(参考1参照)。

 また、障害者の福祉サービスは、すべてが公的責任に帰属するものではなく、社会連帯に基づく社会福祉によって確保されるべきである。したがって、本件法的文書の検討に当たっては、各国それぞれの社会福祉の理念に基づき障害者の人権を保障する観点が必要である。

(参考1) 障害者雇用割当制度と障害者雇用差別禁止法制

 日本、ドイツ、フランス等が採用している障害者雇用割当制度は、障害者を健常者と比較し、保護されるべき立場にある者として位置づけ、障害者雇用は事業主の社会的連帯責任において行うべきであるとの思想に立ち、事業主に対し一定割合の障害者の雇用を義務づけることにより、その雇用失業状態を健常者と同様の状態にまで改善することを意図した制度である。

 一方、アメリカが採用している障害者雇用差別禁止法制は、障害者を健常者と同様に自立した労働者を位置づけ、障害者に対し事業主が必要とする基本的な職務能力を有していること(「有資格であること」)を求めた上で、事業主に対し一定程度の職場環境の改善措置等(「合理的適応措置」)を行うことを義務付けるものである。

 現在の日本においてアメリカのような障害者雇用差別禁止法制を採用することは以下のような問題点があるため、現状においては、障害者雇用割当制度である障害者雇用率制度を採ることが適切であると考える。

(イ) 障害者雇用差別禁止法の対象となる者は「有資格の障害者」のみであるため、それ以外の障害者については、障害者雇用差別禁止法制のみで雇用促進を図ることは困難であること、特に重度障害者の雇用を阻害するおそれがあること。

(ロ) 障害者雇用差別禁止法制では、事業主と障害者が双方の事情と権利を主張して争うことから、事業主と障害者の関係が非協調的となるおそれがあること。

(ハ) 障害者雇用差別禁止法では、救済措置を求めるには、障害者自らが告発する必要があり、障害者が差別を証明するために相当な負担がかかるとともに、かなりの時間を要すること。

(ニ) 相当数の苦情・紛争を処理するために相当機関の整備、弁護士の確保等が必要となること。

(6)モニタリングと評価

 下記(7).(ロ)で述べる通り、委員会の設置、報告書提出のあり方については、十分に議論すべきである。また、障害者施策に関し、新たな国際的機関等の行政機構を設置することについても、効率化の観点から疑問が生ずる。

(7)留意点

(イ)既存の人権条約との重複の回避、整合性の確保等

 新たな法的文書はその形式如何に関わらず、既存の人権条約の核であるA規約及びB規約を含む人権6条約やこれらの条約体の合理化簡素化の流れと完全に両立すべきである。従って、既存の人権諸条約に規定されている各権利に関し、障害者のそれらの権利の実現にあたっての制約を克服し、さらに促進させることを大きな柱とすべきである。

(ロ)人権条約解体改革の議論との関係

 既存の人権諸条約の下で各締約国は、既に、政府報告の作成等膨大な作業を抱えている。政府報告の審査を中心とした人権条約体のあり方については、累次の機会に議論されているところであり、今後検討されていく法的文書においても、右議論を踏まえ、政府報告書の作成、審査プロセスを設ける必要性について綿密に検討する必要がある(既存の人権諸条約の報告に障害者の権利の実現のためにとった措置を含めるとする方法も一案)。

外務省より提出

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最終更新日 2003.6.18