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◆福祉新聞2003年5月26日◆
障害者雇用率未達成企業名開示訴訟
「画期的答申」の引き金に
東京地裁 企業名公表を追認
「訴えの利益消去」 原告請求は棄却
障害者の法定雇用率(1・8%)を満たしていない企業の一覧など情報を全面開示すべき――と金政玉さんが東京労働局長を相手取り東京管内約九千社の情報公開を求めていた裁判の判決が十六日、東京地裁であった。判決の内容は、「内閣府の情報公開審査会が『企業名などは開示すべき』と答申しているので、訴えの利益は消失した」と原告の請求を棄却するもの。裁判所としては答申を追認するにとどめた格好だが、画期的な答申を引き出したのも、まさに金さんだった。
裁判を起こしたのは、DPI障害者権利擁護センター所長の金政玉さん。雇用促進法制定以来、調査では法定雇用率が達成された年は一度もない上、就職差別や不況のあおりを障害者はもろに受けている実態から、「制度が法の趣旨に沿って適切に運営されているとは思えない。東京労働局長は東京管内で法定雇用率未達成の企業約九千社の名前や未達成状況を全面的に情報開示すべき」と訴えていた。
これに対する判決では、金さんの請求を棄却。というのも、裁判の途中で、金さんの取り組みがきっかけになった情報公開審査会の答申によって「非開示」とした東京労働局と厚生労働省の決定がすでにくつがえされていたからだ。裁判官は「訴えの利益は消失した」ことを理由に棄却した。
判決の背景は――二〇〇一年十月、金さんは東京労働局長に対して、情報公開法に基づき未達成企業の会社名や労働者数、不足障害者数などの開示を請求。これを東京労働局長は「公表は企業への社会的制裁になるので不適当」と却下。そこで金さんは提訴した。同時に、厚生労働大臣には行政文書の開示を求め不服審査請求したが、厚労相も「公表は、厚労省の勧告や指導に従わない企業に対して行うもの」と却下。相次ぐ却下に納得できない金さんは内閣府の情報公開審査会(厚労相の諮問機関)へ意見書を送った。昨年十一月、そこで初めて審査会が厚労相に「情報公開法の趣旨に照らして未達成企業名などを開示すべき」と答申し、厚労相は不開示決定を取り消す裁決をすることに。
ただ、金さんが情報の全面開示を求めたのに対して、答申も判決も障害程度の記入欄などは一部非開示としている。理由は「企業名に加えて障害程度などまで開示すると個人が特定できてしまう。障害者に対する偏見や差別がある実態を見ると個人に不利益を及ぼす恐れがある」。判決後、金さんや支援者側からは「そもそも障害者の雇用差別をなくすために裁判を起こしたのに、プライバシーを理由に差別実態を把握しようとしないことは不満」との声が上がり、さらなる運動に取り組む姿勢を見せた。
なお、答申を踏まえ、来月にも未達成企業名は開示される予定。企業名が明るみに出れば、日航訴訟のように「障害者を雇用しないかわりに多額の納付金を支払うのは不当。企業の責任を果たすべき」と株主が経営者を訴えて勝つ判例が増える可能性もある。
裁判が始まった時、金さんはこう語っていた。「地道ながら、情報公開は就労が難しい障害者の実態を打開する策の一つになるだろう。そして、『本来は障害者差別禁止法が必要なのだ』という裏付けになるはず」。
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