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第6回DPI世界会議札幌大会報告集 世界の障害者―われら自身の声

 

 

2004年10月20日
厚生労働大臣 尾辻秀久 殿



 

障害者の地域生活の確立に関する緊急要望




 貴職におかれましては、日々、障害者福祉の推進にご尽力のことと存じます。
 私ども「障害者の地域生活確立の実現を求める全国大行動実行委員会」には、自立生活センターやヘルプセンター、作業所やグループホーム等、障害者の自立支援に取り組んでいる全国各地の543団体が参加しています。身体、知的、精神障害、難病といった様々な障害当事者団体が集まり、障害種別を超えて地域生活・自立生活を実現できるサービス・法制度を求め活動を続けています。

 さて、介護保険法は施行後5年目を迎え、その見直しに向けた議論の大詰めを迎えております。他方で、障害者保健福祉施策についても、全般的な見直しを含めた「改革のグランドデザイン」についての議論が進められようとしています。
 支援費制度実施後わずか1年半しか経っていないにも関わらず「介護保険制度への統合、活用」といった議論が進められてきました。それらの議論は財源論が先行し、多くの障害者が疑問・不安に感じている「今後の障害者のサービス・生活はどうなるのか」という点について全く明らかにされていません。
 今年9月に入ってからは、障害者部会、介護保険部会とも再開されましたが、この間、「統合」という言葉を避けて、「被保険者拡大」論での「論点整理」を行おうとしています。やはり、拙速な「介護保険への統合」議論は、介護保険への吸収合併をもたらすものであると言わざるを得ません。
 当初、障害保健福祉部長は、「障害者団体の反対することは、進められない」「高齢者の介護保険に入れてもらうのではなく、介護保険の仕組みを変えるという前向きな議論をしていきたい」と言っていました。介護保険見直しでは、「介護予防」が強調される方向が明確になった今、まずは「統合議論」を白紙に戻すことが厚労省には求められています。

 他方、「介護保険との統合議論」を急ぐ根拠とされてきた「三位一体改革」の議論について、向こう2年間の「一般財源化」の提案リストが全国知事会等によってまとめられました。昨年度は障害者施策のほとんどが一般財源化の対象に上がっていましたが、今回は、ヘルパーやグループホーム等は対象外となりました。しかし、小規模授産施設や就労支援事業等は対象に入っています。未だ市町村格差の大きい現状の中にあっては、国庫補助金削減−一般財源化を拙速に進めることは、その縮小と格差拡大につながり、あまりにも無理があると言わなければなりません。
 現在、「今後の障害者保健福祉施策の方向(改革のグランドデザイン案)」についての議論が進められています。「障害保健福祉の総合化」「自立支援型システムへの転換」を掲げながらも、具体的な項目として目立つのは、「各サービス共通の尺度と認定審査会の設置」「応益負担の導入、施設入居者の自己負担の見直し」と言った「給付の重点化・公平化」に関連したものです。
これまで障害保健福祉部は、「支援費制度の地域生活の理念、自己決定の理念については断固評価できる」(4月30日公開対話集会での塩田部長の発言)と言ってきました。しかし、今回の「グランドデザイン案」を見ると、そうした理念は歪曲・否定され、実際には重度障害者の地域生活は後退・危機にさらされるのではないかと危惧しています。
 「サービス共通の尺度」に基づく認定審査会方式は、画一的な支給決定につながります。特に、現場である市町村では介護保険認定審査会に準じた構成となり、医療モデルに基づく決定が行われることにより、重度障害者が施設から出て地域で生活することは難しくなります。また、2000年の社会福祉法改正時の議論に比べて所得や就労状況が改善された訳でもなく、所得保障の確立についても議論が行われないまま、「応益負担」に転換することは余りにも唐突であり、必要な人が必要なサービスを受けられなくなる可能性があります。そして、今後のサービス体系では、居宅サービスはほとんど介護給付となり、移動介護等については地域生活支援事業に組み入れられています。一方、自立支援給付は補装具等を除いて、ほとんど施設が入居者に対して個別に行うサービスが入っているだけです。また、グループホームについても障害程度による分類を前提にし、ホームヘルプやガイドヘルプの利用を想定していません。これまでの地域生活や社会参加を進めていく社会資源としてのグループホームから「ミニ施設」的な位置づけに変わっています。
 これまで「介護に馴染まないサービスは障害者施策による横出し・上乗せの仕組みでカバーする」と言われてきました。そして、自立支援給付という限りは、本来、障害者の自立と社会参加に関連したサービスが、その中心を占められなければなりません。しかし、今回の案では、実際には「横出しサービス」は施設が実施するものに限定されており、地域生活支援サービスの横出し・上乗せの仕組みはありません。
 この「グランドデザイン案」は、一方で「障害共通の枠組み」を掲げながらも障害別に分立している現行法体系を前提にしており、その具体項目が実施されれば、1993年障害者基本法、1995年障害者プラン、そして2000年社会福祉法と、支援費制度に至るまで不十分ながらも示されてきた「障害者の自己決定」「施設から地域へ」という歴史を後戻りさせるものであると言わなければなりません。
 私たちが求めているのは、障害種別を超えて、権利に基づき一人ひとりの必要なサービスが確保され、どんなに重度の障害があっても地域で生活できるサービス、システム、法律です。そうした内容こそが、グランドデザインに盛り込まれるべきであると考えます。そうした点から、私たちと誠意ある話合いの場を持つことを強く求めるものです。
以上の認識に立ち、以下、要望します。

 


 



1.介護保険への障害者サービスの統合の結論は今回の法改正においては行わないこと。その上であらゆる障害者が地域で暮らせる施策を作るという方向性にたって、障害当事者と厚生労働省の信頼関係の中で、十分な時間をかけた議論を進めていくこと。

2.現在進められている「三位一体改革」の中で、支援費や小規模授産施設、日常生活用具等をはじめとする障害者施策の一般財源化は、各自治体での障害者サービスの整備・拡充が図られるまでは行わないこと。

3.「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」は、今後の障害者の生活、特に、地域生活・自立生活に関連して重要な影響を与えるものと考えています。この「グランドデザイン案」について、私たちとの協議の場を持つこと。その際、別記の重要事項の要望・提案について誠意を持って受け止めること。

4.身体・知的・精神障害、難病等の障害種別を超えて、地域生活・自立生活が実現できるよう、法制化も含めた検討を行うこと。現行の障害別、かつ狭い障害概念を前提にした法律ではなく、障害別に分立している法体系そのものの見直しを行うこと。その上で、サービス受給権が明記され、地域生活・自立生活に重点をおいた支援法を創設すること。

 


【別記  グランドデザイン案についての要望・提案】

@改革にかかる法案提出・法改正を来年の通常国会で行うスケジュールでは議論を尽くす時間がなく拙速な改革となるため5年間、調査をしながら改革を行うべきである。また、包括払いについては、重度障害者の自立生活をきわめて困難にする可能性があり、「その是非も含めた検討」を行うこと。

 示されたスケジュールでは来年1月の通常国会に必要な法改正、法案の提出をするとされていますが、議論のための時間は殆どなく、特にサービス量の尺度や、サービス利用モデルの設定、包括の対象や事業所の範囲等「基準」を設けるには時間をかけて基準作りをする必要があります。特に「極めて重度の障害者を包括的に支える仕組み」については、その対象者の選定・要件を満たす事業者の育成にも時間を要するため、5年間の調査を行った後に実施すべきです。
 

Aサービスの尺度や支給決定にかかる審査会設置については、「利用者本位」「自己決定・自己選択の尊重」という支援費制度の基本理念を揺るがすものであり、撤回すること。

 支給決定のプロセスに関して、サービスの尺度の検討と審査会を設置する案が示されていますが、「社会福祉法」−支援費制度導入の際に謳われてきた「利用者本位」「自己決定・自己選択の尊重」という基本理念を揺るがすものです。特に、認定審査会については介護保険の要介護認定審査会に準じたものを想定していると考えられ、障害者の地域ケアを全く知らない医師や専門家による医学モデルに基づいた判定が行われる可能性が強く、標準的なケアモデル以上の支給決定は殆どされなくなる可能性が高くなります。そのため、重度障害者の地域生活が困難な状況にもなりかねません。審査会の設置は行うべきではありません。もし、何らかの第三者機関を設ける必要性があるとするならば、現行の決定の仕組みを継続した上で、不服がある場合に受付・審査する不服審査会とすべきです。その際、不服審査会には、本人と障害当事者団体が参加する構成としたものとすべきです。
 

B障害者の所得保障が確保されていない現状では応益負担の導入は行うべきではない。施設入居者への費用徴収の強化も行うべきでない。
 グランドデザイン案では介護保険や健康保険と比較して負担率が低いことから応益負担の導入をするとされていますが、障害者と高齢者との収入や資産格差が考慮されておらず、障害者の所得保障の制度が確立されていない現状では応益負担は利用者の負担増、利用抑制につながる結果を招くため導入すべできではありません。
 2000年の社会福祉法等の改正に関連した議論の中では、「所得にかかわらず必要なときに必要なサービスが利用できること、これまでの公費負担の水準を維持すること」とし、障害者の所得状況等を勘案して応能負担の仕組みを採用することとなりました。その当時と比べて、障害者の所得状況等が大きく改善されているわけではありません。応益負担の導入については、その前提として、障害者の所得保障の確立が進められる必要があります。
 応能負担を維持しつつ、その中で妥当な負担水準について検討がなされるべきです。同様に、施設入居者からの費用徴収に関しても、自ら望んで施設入所をしてきたわけではなく、自己負担や長期入所等を理由にした費用徴収の強化は行うべきではありません。

C自立支援給付は、障害者の地域生活・自立生活を実現していくための新しいサービス体系を盛り込んだものとすること。支援費の移動介護・日常生活支援の類型を障害者の自立と社会参加の個別給付の対象とすべきである。

 今回の「グランドデザイン案」では、介護給付、自立支援給付、地域生活支援事業の3種類にサービスを区分する方向が示されています。しかし、障害者の地域生活・自立生活に関わるサービスはほとんど介護給付に整理される形となっており、移動介護等は地域生活支援事業に入り個別給付の対象から外されています。また、自立支援給付で示されている内容は補装具以外はほとんど施設系のサービスとなっています。自立支援給付という限りは、障害者の自立と社会参加に関わる新しいサービス体系を構築し、その内容を盛り込んだものとすべきです。
 移動介護は介護給付としては廃止され地域生活支援事業の一事業として事業所方式で給付する案が示されていますが、この方式では市町村が委託する事業所のみが移動介護事業を行うため、支援費制度で自己選択・自己決定のもと事業所を選べ、障害者の社会参加を広げてきた移動介護が著しく後退することとなります。移動介護については、障害者の自立と社会参加に関わる支援として、障害者自立支援給付の個別給付とすべきです。また支援費の日常生活支援類型はどのような形となるか示されていないが、これについても現状の給付状況を鑑み、障害者の自立支援に関わる個別給付として位置づけて考えるべきです。

Dケアホーム、グループホーム、福祉ホームといった障害程度による「類型分け」は、「ミニ施設化」につながるものであり、撤回すること。個々の入居者のニーズに応じてホームヘルプ、ガイドヘルプ等のサービスや、自立支援、ジョブコーチも含めた就労支援を利用できるようにすること。
 障害程度による類型分けは、入所施設併設のグループホームは作りやすくなるかもしれないが、地域団体では作業所や地域の障害者のニーズに対応できなくなり、結果的に自立生活移行が進まなくなる事態につながります。また、障害程度による入居者構成を前提とする仕組みになることから、入居者を固定化することになりかねません。さらに、ホームヘルパーやガイドヘルプ等個々の入居者のニーズに応じたサービス利用が制限されるならば、グループホームは「ミニ施設化」することになり、現在の地域生活・自立生活の場から大きく変質してしまうことになります。
 障害程度による「類型分け」は行わずに、グループホームについては障害程度を問わず、入居者4〜5人で安定して運営できる額を保障し、グループホーム仕様の改造・改築費補助や、入居前の体験取り組みに対する補助が必要です。そして、個々の入居者のニーズに応じてホームヘルプやガイドヘルプ等のサービス利用を認めるべきです。

E新たな共通の法的枠組み(障害福祉サービス法(仮称))には、障害者権利条約の動向などもふまえ障害者が地域で生きる権利とサービス受給権を保障することを明記すべきである。また、地域生活・自立生活支援に重点を置いた法律を創設すべきである。

 今回の改革では障害別の法律を改正するのみならず、新たな共通の法的枠組み(障害福祉サービス法(仮称))を導入するとしています。障害別に分立した法体系を見直し、総合化していくことは極めて重要なことであると考えます。重要な法改正作業だからこそ、時代の流れに応じたものとする必要があります。現在、国連で検討されている障害者権利条約では、「地域社会における自立した生活」が明記されています。そうしたことをふまえ、単に各障害別の法律の共通部分をまとめたものとするのではなく、障害者が地域で生きる権利と主体的に誰もがサービスを利用する権利を保障することを明記したものとすべきです。また、地域生活・自立生活に重点を置いた法律を創設すべきです。
また、「共通の法的枠組み」と言いながら、現行の障害別に分立し狭い障害概念を前提にした法案となっており、これでは難病等、「制度  の谷間」にある者については従来と変わりありません。「制度の谷間」の障害者をつくらないよう、障害別に分立している法体系そのものの見直しを行うことが必要です。
 
以上