|
貴職におかれましては平素より障害者福祉へのご尽力に感謝申し上げます。
私たちは、障害者及び家族を会員に持ち、また、その生活を支援する団体です。
2003年4月から支援費制度が導入され、日本の福祉システムが大きく変わりつつあります。措置制度から利用契約に基づく福祉サービスに変わることで障害者の主体性が高まり、選択の幅が広がりました。特に在宅サービスを中心に利用が増え、これまでサービスを使えていなかった知的障害者や障害児にもサービスが届くようになりました。
しかし、ニード予測と予算確保の見込みを誤り、初年度から財源不足の事態を引き起こしました。本来ならば、厚生労働省は政策責任者としての真摯な反省に立って予算の確保を行うことが求められるところですが、そうした事態を逆手に取るような形で、「介護保険への統合」に向けた議論が、この間進められてきました。
介護保険への統合議論は、当初、厚労省・障害保健福祉部長は、「障害者団体の反対することは進められない」「高齢者の介護保険に入るのではなく、介護保険の仕組みを変える前向きな議論をしていきたい」と言っていました。しかし、全国から650人が集まった4月30日の「"介護保険"と"障害保健福祉施策"の関係を考える公開対話集会」の場においても、また、6月4日の社会保障審議会・障害者部会でだされた中間報告書案においても、障害者団体との話合いが重ねられる中で指摘された問題点や懸念に対しての具体的な回答や対応は明らかにされていません。
社会保障審議会・障害者部会の中間報告書案においは、介護保険(1日3時間の身体介護ヘルパー利用が上限)では足りないサービスや外出など障害特有のサービスについては、税財源による二階建てのサービスを行うと曖昧な説明をしていますが、介護保険に統合された場合、9割以上の市町村では障害者サービスの全予算が介護保険に吸収されて消滅し、二階建て部分がなくなることを私たちは懸念しています。しかも、いったん障害者サービスの予算がなくなると、自治体の予算難で制度の新設が難しい現状では介護保険を越えるサービスは受けられず、1日3時間以上介護の必要な障害者は、病院や施設から一生出られない世の中になってしまいます。(これに対して、現在は、親が死亡した場合等で、重度障害者が1人暮らしになれば、過疎地の町村でも長時間のヘルパー利用ができるように補正予算が組まれています。これは柔軟な障害ヘルパー予算があるからです。)。
また、「介護保険に入ることで、身体・知的・精神という障害別を超えたサービス体系ができる」という説明もされていますが、これまで、精神保健福祉法改正の際に、当事者団体からは「医療と福祉を切り離した上で、精神障害者が自己決定してサービスを受けられるようにしてほしい」と要望してきたことには真摯に応えてこず、ここにきて介護保険を「打ち出の小槌」であるかのように言い、身体・知的・精神障害者の分断を図るかのような議論には不信感を感じています。
このように疑問点が多く不明確な議論のままで、「介護保険への統合=吸収合併」が打ち出されることは、私たちは到底容認できません。
他方、この間、国・地方財政の「三位一体改革」に関する議論が進められてきています。今後、2年間で残り3兆円の国庫補助負担金を削減する予定とされていますが、障害者の在宅サービスについても一般財源化される可能性があると伝えられています。
これまで措置制度の下では、障害者施策は入所施設を中心に展開されてきました。昨年の支援費制度導入によって、ようやく在宅サービス整備の端緒が開かれたばかりです。そのため、現状では地域格差が大きく、都道府県レベルでの利用者数の格差が6.2倍(知的障害者のホームヘルプは23.7倍、グループホームは15.3倍)にもなっています。同様に、精神障害者のホームヘルプの格差は11.6倍です。
こうした状況をふまえた時、ホームヘルプやグループホーム等の障害者の地域生活に係わる施策について、国庫補助金削減−一般財源化を拙速に進めることは、その縮小と格差拡大につながります。国は、2003年からの障害者基本計画では、「脱施設(病院)・地域移行」を打ち出しました。そのためには、地域生活を支えるホームヘルプやグループホーム等の拡充が必要です。
昨年の支援費制度導入に伴うサービスの伸びを受けて、15年度の当初予算(ホームヘルプは280億円)では補助金が足りなくなり、貴省では別の予算を流用しましたが対応し切れず、ホームヘルプで、約25億円の補助金が不足しました。16年度のホームヘルプサービス予算も約72億円以上の不足予定です。補助金不足の中、すでに、障害者が必要なサービスを切り下げた市町村もあります。現在の障害者入所施設予算は約3000億円で、ホームヘルプ予算は、わずかその10分の1です。
今、求められているのは支援費制度導入をきっかけに見え始めた「施設から在宅の流れ」を、より力強く、明確にしていくこと、そして、自ら策定した障害者基本計画の「脱施設(脱病院)・地域生活移行」実現に向けて、国はその責任をしっかり果たすべきだと考えています。
以上の点をふまえて、私たちは以下の点を要望しております。貴殿におかれましてはこのような事情をご理解いただき、何卒、ご支援いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
記
1.支援費制度導入をきっかけに見え始めた「施設から在宅の流れ」をより力強く、明確にし、そして、障害者基本計画の「脱施設(病院)・地域生活移行」実現に向けて、国はその責任をしっかり果たしてください。
2.今後予想される支援費制度の財源不足の事態に対して、その制度を維持・発展させる観点から、財源確保に向けて補正予算をはじめとする必要な措置を講じて下さい。
3.介護保険への障害者サービスの統合の結論は今回の法改正においては延期してください。その上であらゆる障害者が地域で暮らせる施策を作るという方向性にたって、障害当事者と厚生労働省の信頼関係の中で、十分な時間をかけた議論をしていただくようお願いします。
4.現在進められている「三位一体改革」の中で、支援費をはじめとする障害者施策の一般財源化は、各自治体での障害者サービスの整備・拡充が図られるまでは行わないで下さい。
5.重度障害者の地域生活確立、施設(病院)からの地域移行にとって不可欠なホームヘルプ、グループホーム制度の拡充を重点的に図ってください。
6.精神保健福祉長期計画(ダイヤモンドプラン)に沿って、精神障害者の地域生活支援センターや小規模通所授産施設等、地域生活支援施策の予算を確保し、具体的充実を図って下さい。
以上 |