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■■ 改革のグランドデザイン案」に対する日本会議の見解 ■■
(2004.11)

 

SSK DPI-われら自身の声 2004年11月 vol.20-3より

「今後の障害保健福祉施策の改革」−「グランドデザイン」を読む

DPI日本会議 事務局長 尾上浩二

 「障害者福祉サービス法制定へ」。10月上旬に新聞各紙で一斉に報道された。10月から社会保障審議会・障害者部会で議論されている「今後の障害保健福祉施策について」(改革のグランドデザイン案、以下「グランドデザイン」と略)を取り上げたものである。
「自立支援型システムへの転換」を掲げている「グランドデザイン」。だが、ここに示されている内容が実施されれば、障害者サービスや私たちの生活に大きな影響を及ぼすことは間違いなく、その意味では「大転換」であろう。執筆時点では審議会でも議論の途中であり、その具体的内容は不明な点は多いが、「グランドデザイン」を読み解いてみたい。

「支給決定プロセス」 「費用負担見直し」
「サービス体系の再編」 「障害者福祉サービス法」

−4つの項目群と二つの動向

 

■「(介護保険)被保険者拡大」論の中「グランドデザイン」発表

 支援費制度実施後わずか1年半しか経っていないにも関わらず「介護保険制度への統合、活用」といった議論が進められてきた。それらの議論は財源論が先行し、多くの障害者が疑問・不安に感じている「介護保険に入った場合、サービス・生活はどうなるのか」という点について全く明らかにされてこなかった。そのため、多くの障害者団体は反対、または判断材料がなく賛成できないとの慎重姿勢をとった。さらに、サービスの実施者である市町村からも「拙速な統合」に対する反対意見があがり、7月30日の社保審・介護保険部会では「統合」について「積極的な考え方」「慎重な考え方」の文字通りの両論併記が示されるにとどまった。
 1〜4月には「介護保険との統合論」、6月の障害者部会に示された3委員案では「活用」論が言われてきた。が、9月に入ってからは、厚労省は「統合」という言葉を避け、「被保険者拡大」論での「論点整理」が示されてきた。
 そして、そうした介護保険見直しの「論点」が変化する中、10月12日の障害者部会で「グランドデザイン」が示された。
 まず、「今後の障害保健福祉施策の基本的な視点」として、1.障害保健福祉施策の総合化、2.自立支援型システムへの転換、3.制度の持続可能性の確保、の3点が掲げられている。
 しかし、後ほど見る通り、その具体的内容は、1990年代に入って言われてきた「障害者自身の自己決定」を基本においた自立論から明らかにズレがある。そして、目につく内容は「支給決定プロセスの透明化」「負担の見直し」と言った「給付の重点化・公平化」「制度の効率化・透明化」に関連してのものである。

■4つの項目群と二つの動向

 内容面からは、次の4つの項目群に整理できる。

@市町村計画義務化と支給決定のプロセスの透明化−サービス共通の尺度+認定審査会+3区分の国庫補助基準、付随的なツールとしてのケアマネジメント

 「サービス提供量等の目標の記載を義務づけた障害保健福祉計画策定の制度化」が示されている。おそらく、1993年の老人健康福祉計画の義務づけに習ったものと思われる。老健計画時点ではゴールドプラン〜新ゴールドプランといったサービス総量全体を拡大していく計画が国レベルではあった。一方、新障害者プランは策定時から数値目標の低さが批判されていた。国レベルでの障害者プランの大幅な見直しや地域生活基盤整備の特別立法等が求められる。
 「支給決定プロセスの透明化」に関連しては、「イ.サービス共通の尺度づくり、ロ.サービス認定審査会の設置、ハ.サービスモデルに基づく費用額設定とそれに対応した国庫補助基準の仕組み」の3点が中心となる。支給決定に関しては「認定審査会」が受け持つことになるので、障害者ケアマネジメントは付随的な役割になると思われる(図1)。「サービス共通の尺度」は介護的側面については「要介護認定を基本に障害種別の特性を踏まえた尺度設定」となっている。参考資料を見ると3区分程度が想定されている。認定審査会は、現場の市町村に行けば結局のところ介護保険の認定審査会に準じた構成となり、医療モデル中心となり障害者ニードについて十分な考慮がなされずに決定されることになりかねない。画一的な支給決定になりかねず、「自己決定」「一人ひとりのニードに基づく支給決定とサービス利用」という支援費制度で掲げられてきた理念と矛盾する。

A負担の見直し−応益的負担の導入、施設入居者の負担増+公費医療助成の低所得者のみへの限定

「負担の見直し」では、「契約に基づくサービスだから応益的負担の導入」という非常に荒っぽい根拠しか示されていない。2000年の社会福祉法改正当時の議論で、「障害者の所得・就労状況をふまえ必要なサービスを受けられるよう」に応能負担が採用された。当時と比べて、大きな改善は見られないのに応益負担を導入するのはあまりにも唐突である。
 「応益的負担の導入に併せて扶養義務を廃止する」とされているが、減額措置については「生計を一にする家族の負担能力を勘案する」とされており、自己負担分を本人が払うのが困難な低所得な障害者、親元に暮らす在宅障害者の多くにとっては、実質的に扶養義務が強化されることになりかねない。
 施設入居者については、今後、食費、日用品費等について自己負担とされている。現行の水準を大きく上回る場合は、年金のほとんどが徴収されることとなり、地域生活移行のための準備資金がつくれなくなるのではないか。また、「長期入所者」に対して別途利用料を設定することも想定されている。これは、介護保険のホテルコスト論をそのまま当てはめたもので、障害者が自ら望んで長期入所しているわけではない実態がふまえられていない。医療の公費助成も、実態をふまえた検討がなされているようには見えない。

Bサービス体系の見直し−介護給付・自立支援給付・地域生活支援事業の3種類への振り分け、「自立」理念の揺り戻しと施設体系中心の再編、極めて重度への包括報酬

「総合的な自立支援システムの構築」として、今後のサービスについて介護給付・自立支援給付・地域生活支援事業の3種類への振り分けが提起されている(表1)。
 介護給付にはホームヘルプ、デイ、ショートステイ等の在宅サービスと障害者支援施設(入所施設の住まい機能部分)等がある。自立支援給付では補装具制度以外は、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援等の施設の日中活動が中心で、「地域での自立生活への支援」ではなく、「施設による自立訓練」への給付になっている。そして、移動介護等は個別給付から外され、地域生活支援事業という市町村が実施する事業に整理されている。また、グループホームについても障害程度による分類を前提にし、ホームヘルパー等の利用が想定されず、「ミニ施設」的な位置づけに変わっている。包括給付については、ALSや強度行動障害等、「極めて重度の障害者」に限定した仕組みが想定されている。
 将来は、地域生活支援事業は地方へ委譲され、国は介護給付と自立支援給付のみ関わるという事態も一定視野に入れていると察せられる。
 これまで「介護に馴染まないサービスは障害者施策による横出し・上乗せの仕組みでカバーする」と言われてきたが、実際には「横出しサービス」は施設が実施するものに限定されており、地域生活支援サービスの横出し・上乗せの仕組みがなくなっている点に注目しておく必要がある。地域生活・自立生活支援の新しいサービス体系こそが検討されなければならない。

C障害者福祉サービス法(仮)−既存の障害者法体系(3分立、障害認定・手帳制度等)を前提としつつ、共通のサービス項目を一括りにしたもの

 障害者福祉サービス法(仮)については、まだ具体的な内容が明らかになっていないが、「法律構成のイメージ」をみると、既存の障害者法体系(3分立、障害認定・手帳制度等)を前提としつつ、共通のサービス項目を一括りにしたものと言える。難病等の「制度の谷間」にある障害者の問題の解決や、サービス受給権・申請権等が明記されるか等の問題がある。

■障害種別を超え地域自立生活を実現する法制度・サービスを

 以上、ポイントに絞って取り上げてきたが、次の点が特徴としてあげられる。
 

 
  1. 「自立支援システムへの転換」 「各障害共通の枠組のため障害者福祉サービス法」と一見「改革的」な枠組みが示されている。しかし、その具体内容は「ADL自立・職業自立論」へ傾斜しており、「自立」理念の揺り戻しが起きている。

  2. これまで障害者施策では、障害者の実態・特性をふまえた一定のきめ細やかさや、1990年代以降、当事者発・地域発の事業等を積極的に採用する形で展開されてきた。「グランドデザイン」は、そうした展開と矛盾する内容となっている。


 おそらく、今回の「グランドデザイン」は、介護保険見直しと三位一体改革という動きを射程に入れ、その形に沿って、あたかもジグソー・パズルのピースをつくるかのような形で検討されてきたのではないか。そのために、これまでの障害者施策の内在的な発展方向との整合性や実態的な検証が行われないままの案となったと見るのは、うがち過ぎだろうか。
 支援費制度移行で実際に重度障害者の地域生活が少しは始まった。「介護保険との統合問題」、「グランドデザイン」のいずれも、この重度障害者の地域生活を維持・継続できるのか、脱施設・地域生活支援がより進むのかどうかが議論の基本視点であることには変わりはない。私たちが求めているのは、障害種別を超えて権利に基づき一人ひとりの必要なサービスが確保され、どんなに重度の障害があっても地域で生活できるサービス、システム、法律だ。障害者運動と施策の歴史をふまえた検討を求めていかなければならない。

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最終更新日2004.11.17