要望書・意見提起等一覧 【日付順】

要望書・意見提起等一覧 【課題別】

「特別支援教育を推進するための制度の在り方
 について(中間報告)」に関する意見


(2004年12月24日)
DPI(障害者インターナショナル)日本会議議長 三澤了
連絡先:〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-11-8武蔵野ビル5階
電話:03-5282-3730 ファックス:03-5282-0014


 去る12月2日付で、標記中間報告に対するパブリック・コメントの募集がありましたので、DPI(障害者インターナショナル)日本会議として下記の通り提出いたします。

A. パブリック・コメント募集期間について
 今回のパブリック・コメント募集については、示達から締切までおよそ20日の期間で取り組まなければならず、慎重に検討するには必ずしも十分な期間とはいえない。また、この期間では、広報も十分に行われないため「各界各層から広く意見を(1頁)」とはならない。障害児の教育制度に係る大きな改革に関するパブリック・コメント募集であることから、本来は十分な期間を設け広報を行い、広く様々な意見を募集すべきである。

B. 中央教育審議会初等中等教育分科会特別支援教育特別委員会のもたれ方について
 中間報告は、中央教育審議会初等中等教育分科会特別支援教育特別委員会での議論の結果である。特別支援教育特別委員会は、傍聴をマスコミにのみ限定してこれまで開催されてきた。情報公開法の時代にあって、非常に不十分な対応であったと言わなければならない。審議会で使われた資料等はホームページにて公開されてきたが、掲載まで何週間も待たなければならず、迅速に公開されることを希望する。また、同ホームページには審議会の議事録も掲載されるが、議論の概要のみにとどまっており詳細を知ることはできない。本来は審議会の一般傍聴を可能にし、審議会開催時から「特別支援教育の普及啓発」を審議会開催時から真摯に行い、一般市民の関心を高めることにつとめるべきである。

C. 「特別支援教育を推進するための制度の在り方について(以下、中間報告)」への意見*最初に中間報告の頁数と内容を示し、意見を述べることにする。
1. (中間報告:3頁)・・・ハイレベル政府間会合において、すべての人のための障壁のないかつ権利に基づく社会に向けた行動課題「びわこミレニアムフレームワーク」が採択された。

  • 「びわこミレニアムフレームワーク(以下、BML)」が採択された事実のみを 記すのではなく、内容の紹介とあわせて特別支援教育でどのように取り組むのか、具体的内容を明記するべきである。

  • BMLでは、次のように述べている。『「特別な教育ニーズに関するサマランカ 声明と行動計画」は、地元の通常の学校での教育へのアクセスを確保するインクルーシブ教育は、農村地帯の障害児・青年を含め、大多数の障害児・青年が教育を受けるための最高の機会を提供すると勧告した。
    http://www8.cao.go.jp/shougai/asianpacific/biwako/mokuji.html)』
    また、「目標達成のために求められる行動」では、「教育担当省は、障害児の家族や障害者団体と協議しつつ、教育政策・計画を立案し、また、障害児が地元の初等教育機関に参加できるようにする教育プログラムを開発すべき。政策を実施する際には、全ての児童は学校に通う権利があり、学校は学習者の差異を受け入れる責任があるとの明確な理解の下、状況に応じて、インクルーシブ教育のための学校制度を準備する必要がある。」としている。日本政府はこのBMLを採択しており、当然この内容を実行する責務がある。BMLの理念と「求められる行動」を尊重するならば、日本政府は障害児が地域の学校で学ぶ「インクルーシブ教育のための学校制度」を確立するよう施策を講じなければならない。年次目標の提示、実行とともにモニタリングを実施するべきである。

  • 日本政府は、2004年1月に子どもの人権委員会から勧告をうけている。
    (CRC/C/15/Add.231)。
    前回の審査の際にも同様の勧告をうけているため、2度目となった同様の勧告は「委員会は、精神障害を含む障害のある子どもが、条約で保障された権利の享受の面で依然として不利な立場に置かれており、かつ教育制度およびその他のレクリエーション活動または文化的活動に全面的に統合されていないことを懸念する」であり、「教育ならびにレクレーション活動および文化的活動への障害のある子どものいっそうの統合を促進すること」という勧告を受けている。この勧告の内容を真摯に受け止め、学校教育での「統合」を促進するべきである。

2. (中間報告:3頁)障害者基本法は、(中略)平成16年6月に一部改正され・・・

  • 改正された障害者基本法の第3条では、「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」と障害者に対する差別を禁止する条項が加わった。この理念は、学校教育の場面においても当然適用されるべきである。学校教育において障害を理由とした差別は数多く存在するが、中間報告ではその是正措置について全く述べられていない。

  • 普通学級で学ぶ障害児の多くは保護者の同伴を求められ、「覚え書き」に同意しなければ、通常学級で学ぶことが認められないことが頻繁にしょうじる。また、「覚え書き」という後に残る形でなくとも、口頭での「約束」等も含めた有形無形の「条件」が求められる。「覚え書き」には、「他の児童に登校や入室の世話をさせない。他の児童に退室や下校の世話をさせたり、依頼をしたりしない。」など、クラスメイトとの関係を管理し、保護者に介助を強制させている。これは、明らかな差別である。障害児が通常学級で学ぶ際に必要となる介助者等、必要な配慮を確保するための予算を確保し、各学校で介助者を雇えるようにするべきである。プールへの参加、修学旅行への参加が拒否される障害児が毎年後を絶たないことを慎重にうけとめ、差別について実態調査を障害者団体と協力して行い、その是正をはかるための施策を講じるべきである。

  • 障害者基本法の付帯決議においては、「法第三条第一項の基本的理念を踏まえ、障害者が、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に、分け隔てられることなく参加できるようにすること」「障害のある児童・生徒とその保護者の意思及びニーズを尊重しつつ、障害のある児童・生徒と障害のない児童・生徒が共に育ち学ぶ教育を受けることのできる環境整備を行うこと」と定められた。特別支援教育の導入にあたって、この法改正の内容を踏まえて取り組まれるべきであるにも関わらず、学校教育における差別を禁止する取組み、障害の有無に関わらず通常学級で共に学ぶための環境整備について、この特別支援教育においては具体的に全く述べられていない。中間報告では、「特殊学級に在籍する児童生徒が通常の学級で学ぶ機会が適切に設けられることを一層促進するべきである(15頁)。」とあるが、具体的な支援の在り方や予算の裏づけのないままでは実行性の薄いことを真摯にうけとめるべきである。

3. (中間報告:4頁)「特殊教育」では、障害の種類や程度に応じて盲・聾・養護学校や特殊学級といった特別な場で指導を行うことにより、手厚くきめ細かい教育を行うことに重点が置かれてきた。「特別支援教育」とは、障害のある児童生徒等の自立や社会参加に向けた主体的な取組みを支援するという視点に立ち、児童生徒等一人一人の教育ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導や必要な支援を行うものである。

  • 特殊教育から特別支援教育への転換について、その必然性が不明である。特殊教育の問題点を明らかにし、特別支援教育に転換する必然性と、その転換により目指すべき方向性を説得的、かつ明確に述べるべきである。(また、特殊教育と特別支援教育の違いが明確でないため、簡潔な説明が求められる。)

  • 特別支援教育が、障害者の自立や社会参加に取り組むことを強調するのならば、具体的施策を明確にするべきである。しかし、中間報告では全く述べられていない。まずは、特殊教育で行われてきた「特別な場」での指導、いわゆる分離教育を改めるべきである。特殊教育のもとで提供された学校教育が、障害者の自立の支援にならずむしろ地域での孤立化を促進したという証言は数多く存在する(『DPI:われら自身の声』vol.20.3では、学校教育で障害児だけが集められることによる障害者自身への悪影響を述べている。特に、障害を否定的に捉え自分を肯定できなくなることがある。36-39頁)したがって、地域生活をするためのノウハウを学ぶ機会を学校教育終了後に障害当事者自身が提供している実態がある。全国各所に存在する自立生活センターでは、「自立生活プログラム」を実施し、障害者自身による再教育が行われている。2002年度では、125センターのうち86センターが「自立生活プログラム」を実施し、のべ3,028名が参加している。
    http://www.j-il.jp/matome/matome_top.htm
    このことからも、現在の特殊教育が「手厚くきめ細かい教育」をしていないこと、障害者の自立支援に対して無力であることは明確であり、障害者団体との協力のもと学校で学ぶ障害児への支援を実施するべきである。

4. (中間報告:4頁)「個別の教育支援計画」の策定

  • 個別の教育支援計画は、各生徒のできないところや苦手なことを中心に障害の克服をするための計画であるべきではなく、本人の希望する将来の生活を支援するように立案されるべきである。したがって、本人による参画、承諾なくしては、実施できないようにするべきである。

  • 個別の教育プログラムが法制度化されているアメリカ合衆国においては、教育プログラム立案にあたっては、障害児の親の参加を保障しなければならない。また、障害児本人が参加してプログラムが作成されることが多い。中間報告では、「個別の教育支援計画」の策定過程について述べられていないが、本人との協議のもとに教育内容や方法が検討されるべきである。

5. (中間報告:14頁)特殊学級等を直ちに廃止することに関しては、障害の 種類によっては固定式の学級の方が教育上の効果が高いとの意見があることや・・・

  • 「固定式の学級の方が教育上の効果が高いという意見」によって、その存続を決めるとするのは、合理的な判断とは言えないだけでなく、全く客観的判断とは言えない。

  • 障害の有無で学ぶ場所を分けずに、一緒に地域の学校で学ぶことによっておきる良い効果については、多くのデーターがある。例えば、インクルーシブ教育について長年の蓄積のあるアメリカ合衆国では、インクルーシブ教育による効果について87%の親たちが総合評価を効果的だったと判断しているのに対し、1%の親だけが障害児と一緒に学ぶことを否定的に答えたという調査結果がある。また、67%の親が、インクルーシブ教育の開始によって、自身の子どもが他の子どものニーズを認めるようになったとし、行動や外見上の違いを認めるように変化したと答えた親は、65%だった。この他、クラスの雰囲気が暖かくなった、子どもが人を認めつつ、自分についても自信を高めることができるようになった、成績が上がった等の回答があった。73%の親たちは、今後も必ずインクルーシブ教育で自身の子どもが学ぶ機会をもつべきだと答えている(この調査は389人が回答した。いずれも、障害児は通常学級で終日過ごすフルインクルージョンの形態で学んでいる。重度から中度の知的障害、自閉症、脳性まひ等をもつ5歳から12歳の子どもたちが学ぶ学級の親たちを対象にアンケート及びインタビューが行われた。Peck, Charlies A., et al. (2004) Parent perception of the impacts of inclusion on their nondisabled children."Research and practice for persons with severe disabilities" vol.29 number 2.)。
    以上のことから、固定式の学級の方が教育上の効果が高いとは言えない。アメリカ合衆国は、障害児が通常学級で学ぶことを原則にし、そのために必要となる支援を保障しなければならないとする法律がある。日本においても早急に、通常学級で障害児が学ぶために必要になる配慮を実施するよう、法整備と同時に財政的な確保を行うべきである。

6. (中間報告:16頁)通級による指導の見直し、「巡回による指導」について

  • LD・ADHD・高機能自閉症をもつ生徒の支援については、校内での通級や小、中学校からの特別支援学校への通級、教員が複数の学校をまわる「巡回による指導」を想定しているが、いずれも別学を原則としているところが問題である。また、障害児の教育には「高い専門性」が必要であるとし、障害児の教育を特別支援学校の教員に集中させてしまうと、通常学級の教師は障害児の教育についての関心をもつことができなくなるし、連携も困難になる。また、通常学級内での支援について全く検討されていないこと、分離教育を前提にしている姿勢そのものが問題であるといえる。LD・ADHD・高機能自閉症をもつ子どもを含めて、通常学級で学ぶことを原則とするべきである。

7. (中間報告:18頁)特別支援教育コーディネーター

  • 特別支援教育コーディネーターの選定および任命の過程が不明である。教員免許をもつものの中からのみ採用するべきではなく、民間からの学校長の採用にみられるように、地域での社会教育、福祉活動に従事しているものもコーディネーターになれるよう、公募とするべきである。特に、すでに地域で障害者の自立支援を実施している障害者団体は、すでに個別の支援のノウハウをもっているので、コーディネーターとしてその役割を発揮できることは明らかであるため、これらの取組みを尊重し学校教育に生かしていけるような施策を講じるべきである。

「特別支援教育を推進するための制度の在り方について(中間報告)」に 関する提起

前のページへは、ブラウザの「戻る」でお戻りください。

最終更新日2005.1.12