2002年10月31日

内閣府障害者施策担当室 御中

DPI(障害者インターナショナル)日本会議
議長 山 田  昭 義

「新障害者基本計画」に関する意見書

 私たちDPI(障害者インターナショナル)日本会議は、国連NGOであるDPIの国内組織として、障害者の自立生活の実現と人権確立を目指して、障害別を超えた活動を展開しています。今年10月には札幌で世界中から約3200名の参加者のもとで、DPI世界会議が開催されました。
DPI日本会議としては、このたびのDPI世界会議の成功が今後の国内外の障害者政策、障害者運動にも重要な意義を持つものと考えて取組みを進めているところです。
 現在、検討が進められている「新しい障害者基本計画」(以下、「新障害者基本計画」と略)は、向こう10年に渡る障害者施策の基本方向を示すものであり、非常に重要であると認識しています。国際的には「国連・障害者の権利条約」策定に向けた会合が開催され、また、国内においても障害者差別禁止法制定に向けた動きが始まっています。さらに、「新障害者基本計画」の期間となる2003年4月からは、障害者福祉サービスの多くが支援費制度へ移行する時期に重なります。まさに、障害者をめぐる状況は大きな転換期を迎えています。その転換のキーワードは、「差別禁止・権利」「自己決定を基本にした自立生活」「ノーマライゼーション、インクルージョンのさらなる推進」です。
 「新障害者基本計画」の検討に当たっては、こうした転換期との認識に立ち、今後の方向性を明確に示していく内容としていく必要があります。
 そうした点から、以下、「新障害者基本計画」に対する意見を提起します。

一.「障害者差別禁止・権利」、「自己決定を基本にした自立生活」、「ノーマライゼーション、インクルージョンのさらなる推進」の視点から、以下のような基本方向を示すこと。
@「新障害者基本計画」の実施期間は、国際的には障害者権利条約、国内的には障害者差別禁止法制定などが日程にのぼる時期となる。戦後以来続いてきた「障害者を保護・更生」の対象とみなした上で施策を展開するという基本的枠組みから、「自立・権利」を基本視点とした枠組み転換を着実に進めていく必要がある。
A障害者福祉サービスの多くは、2003年4月から「支援費制度への移行」となる。その理念は、「利用者本位」「選択できる制度」が掲げられている。しかし、そのためには障害者の地域での自立・社会参加の実現のための十分なサービス基盤の整備と自己決定を支える支援、エンパワメントの実現が不可欠である。また、エンパワメントの推進のためには、「主体性・自立性」を尊重した当事者活動への支援が必要である。
Bこれまで、障害者雇用については、「一般労働市場にのる者は一般雇用」−「それ以外の者は福祉的就労」の二元論的な枠組みで進められてきた。これまでの「(訓練を行ない)支援が要らなくなったら働く」から、「支援を得ながら働く」ことへの転換が必要である。今後、基本的に働きたいという意志のある障害者への就労機会の確保と支援の仕組みが必要である。
Cこれまで理念として広められてきたノーマライゼーション、インクルージョンを、さらに具体化していく段階に来ている。
D交通や建物のバリアフリー、IT分野でのバリアフリーの推進について、いかに権利の視点から進めていくか。また、検討、設計段階から事後評価に至るすべての段階で障害者参画を進めていくことが重要である。
E自立生活センターや共同作業所等のNPO、当事者活動の役割がますます重要になり、そうした活動の社会的位置づけの明確化、支援施策が必要となる。

二.章立てについては、全体に、各省庁ごとで行っている施策を羅列したというもので、体系性に欠けると言わざるを得ない。
 国際的に「障害者の権利条約」の検討がすでに始まっていることをふまえて、「差別禁止・権利擁護」の項目を立てた上で、次のような章立てにすることを提案する。
1.差別禁止・権利擁護
2.生活環境
3.生活支援
4.教育
5.雇用・就労
6.情報コミュニケーション
7.所得保障
8.啓発・広報
9.保健・医療
10.国際協力

三.現行の障害者プランでの数値目標の設定は、旧厚生省関連と道路のバリアフリー化等一部の分野にとどまっていたことの反省をふまえ、すべての分野での数値目標の設定を行うこと。
 また、地方分権の時代において、実際の障害者プランの実施を考えると市町村での取り組みが大きな鍵を握る。そうした点から、市町村障害者計画の義務化を行うこと。
 さらに、「新障害者基本計画」の推進体制の項目を設け、その中に当事者参画の推進と当事者活動への支援を明記すること。

四.以下、各論についての意見

1.差別禁止・権利擁護
・障害者権利条約への積極的対応−権利条約を受けた国内法の改正、整備
・障害者差別禁止法制定の検討・推進
・欠格条項廃止に向けた一括的検討
・(イギリスのDDR[障害者権利委員会]等の例にならった)障害者が過半数参加した差別禁止・権利擁護委員会の創設

2.生活環境
・バリアフリー住宅設計基準と義務化による民間、公営問わない住宅のバリアフリー化の推進
・公営住宅の知的、精神障害者の単身入居枠の創設と欠格条項の撤廃
・長期の施設入所、入院者の賃貸住宅契約の際の公的保証人制度等の地域での住まいの確保支援
・障害者入居差別禁止規定と家主、不動産屋に対する啓発、指導
・ハートビル法について、居室部分、ユーザービリティの視点からの再改正
・交通バリアフリー法の着実な実施と、ノンステップバスの基準化等をはじめとした再改正

3.生活支援
・これまでの施設中心の政策体系についての反省、総括(ノーマライゼーション理念を掲げながらも施設整備が中心になった矛盾)
・ノーマライゼーションの着実な推進〜脱施設(脱病院)−地域生活支援を基調に置き、具体的な脱施設(脱病院数)の計画化=数値目標の設定と、それに見合った介護サービス、住まいの場(グループホームのバージョンアップ含む)等の確保を行うこと
・居宅内に限らない、障害者の社会参加支援に関するサービスの検討と充実。特に、長時間介護が必要な重度障害者が地域で自立した生活ができるようなサービスのあり方の検討。
・ピアカウンセリング等をはじめ当事者主体、エンパワメントを基軸においた自己決定を支える仕組みと、当事者活動に対する支援
・地域生活移行のシステムについて、施設内・病院だけの取組みに収れんしないように、自立生活センター等の地域の社会資源と連携した仕組みづくり。地域生活移行期間中に、自立体験の機会を得られるように、施設入所者に対しても居宅生活支援費の利用を認めること、また、自立体験室を設置し自立生活センター等に運営委託すること。さらに、具体的に入所施設の縮小、解体に向けた年次計画を設定すること。
・障害者の自立の視点からの扶養義務の撤廃−世帯単位から個人単位への組み換え
・自立生活を支える所得保障制度の確立
・福祉用具等の研究開発・普及促進と当事者による評価システムの確立

四.教育・育成
・ノーマライゼーションの理念を実現するために、乳幼児期及び学齢期においても、障害を持つ人と持たない人が、ともに学ぶ環境作りを進める必要があり、インクルーシヴ教育を基本とすること。
・乳幼児期からの子育てをはじめとする、保健・福祉・医療・教育など総合的な相談支援体制の整備を進め、本人・保護者の意志を尊重し、そのニードを実現するための支援を行う。また、地域社会における障害者理解のための施策の推進
・原則統合の上での 一人一人のニーズに対応した支援施策の充実−障害をもつ子供が、統合された環境のもとで教育を受けられるよう、カリキュラム、教材、人員、設備等、必要な支援が提供できる施策の整備を進める。
・ 障害をもつ子供と関わる機会の多い、行政、教育関係職員への、障害者の人権や差別の現状等についての研修を充実する。
・高校入学を希望する子供の進路を保障するため、普通高校における受け入れや必要な支援施策の推進。
・ 教育関連施設のバリアフリー化の推進〜学校等が誰でも使える公共施設として、障害者を含む地域住民の活動の場として、また、災害時の避難場所の役割を果たせるよう、バリアフリー化を促進する。

5.雇用・就労
・雇用・就労は障害の有無に関わらず、自己実現、社会参加の重要な課題であり、働く意志のあるすべての障害者が、いわゆる一般就労の場で、障害のない人とともに働くことのできる施策を推進する
・雇用率制度の見直しとして、以下のような点を進めていくこと
 法定雇用率未達成企業、地方公共団体に対する、企業名公表等の指導強化。
 除外率廃止に向けた取組みの推進。
 重度障害者のダブルカウント制度の見直し。
 精神障害者を雇用義務の対象とする方向での検討の促進。
・賃金補填制度の創設〜最低賃金法における適用除外の見直しと、賃金補填制度創設に向けた検討と推進
・採用における実質的な欠格条項の撤廃〜公務員採用試験における、「活字印刷文の出題及び口頭による試験(個別面接)に対応できる者」等の受験資格の撤廃
・公務部門における設備、職場介助者配置制度の創設
・期間を限定せずに必要な時に活用できるジョブコーチ制度の拡充
・通勤、職務遂行を円滑に行うための、道路・交通機関・建築物のバリアフリー化の推進・市町村を基盤とする、障害者就業・生活支援センターの全国的な整備を促進するとともに、ジョブコーチの養成、資質向上
・中途障害者の職場復帰を円滑に行うための施策の確立
・障害者が利用しやすい労働用具の研究、開発の推進
・IT機器に関する初期研修やフォローアップ研修が、身近な所で受けられる体制の整備
・雇用の場における障害者の人権の擁護〜雇用促進法において、差別禁止規定を盛り込むことの検討、人権侵害に関する相談、調査、改善勧告・命令等を可能とする権利擁護の仕組みの創設

6.所得保障
・障害基礎年金を受給できる重度障害者は全障害者の三〇%程度でしかなく、給付額も生活保護の最低生活基準以下の年金額でしかないため、障害基礎年金を受給していても、地域での自立生活を行うためには生活保護を受けざるを得ない現状になっている。
・就労の困難な障害者への障害者基礎年金で最低の生活が可能な給付額を保障すべきである。現実的に障害基礎年金の拡充が困難であれば、生活保護制度について扶養義務等の受給要件の廃止または緩和の見直しを行い、権利性を明確にした受給者主体の所得保障制度の確立を検討する。

7.情報コミュニケーション
・デジタルデバイドが生じないようにするとともに、自立と社会参加の視点からの基盤整備。
・情報バリアフリーの推進−字幕放送、並びにテレビ等への字幕デコーダー機能の内蔵義務化。情報アクセシビリティ指針を当事者参画の下に充実させるとともに義務化を行う
・IT機器等の開発に当たっての当事者参画、評価システムの導入

8.啓発、広報
・「障害理解」という「受け身的」存在として障害者を位置づけるのではなく、障害者の人権についての国民的認識を高めていくことを目標とし、障害者参画による啓発事業を推進する。
9.保健、医療
・「予防、早期発見・治療」が前面にきているのを修正
・障害があっても、安心してかかれる地域医療の整備、充実
・精神障害者の人権を保障し、安心してかかれる精神医療。その第一歩として精神科特例の廃止。
・社会的批判を浴びている社会的入院を解消するために、退院促進策の充実。その際に、地域の自立生活センターや当事者団体等と連携したシステムをつくること。
・医療におけるインフォームドコンセントの徹底と、当事者の自己決定の尊重

10.国際協力
・ DPI等の障害者NGOに対する支援と各国の障害当事者の人的育成に対する支援を行う。
・「新しいアジア太平洋障害者の十年」の推進に積極的に取り組むための財政措置を講じる。
・ 障害者権利条約の早期実現に向け、関係機関および団体などと協力・連携しながら、全力をあげて取り組む。今後開催される障害者権利条約にかかる国連特別委員会の政府代表団に障害当事者をはじめ、障害関係団体の代表をメンバーに加えること。

以上

要望書・意見提起等一覧 【日付順】へもどる

要望書・意見提起等一覧 【課題別】へもどる