東京都福祉局
局長 川 崎 裕 康 様
DPI(障害者インターナショナル)世界会議東京行動委員会
支援費制度の運用に関する要望書
私たち「DPI世界会議東京行動委員会」は、東京都において、本年10月の「DPI世界会議札幌大会」の成功にむけた取り組みを中心に活動するとともに、都内の障害者団体の連絡調整をしていきながら団体相互の協力関係を積み重ねていくことを通じて、障害当事者の権利の確立を目指して活動しています。
私たち障害をもつ当事者団体は、支援費制度の実施にあたって、制度を利用する当事者の自立支援と自己決定の尊重という立場から、これまで再三にわたり国に対して意見提起をしてきました。
本年10月1日からの区市町村における支援費申請の受付開始を直前にして、私たちは東京都の支援費制度に関連する施策の準備状況に大きな関心をもっているところです。
しかしながら、現時点で未だ明確にされていない事項が残されていることに対しては、各種のサービスを利用して生活を成り立たせている多くの障害当事者が不安ともどかしさを強く感じており、このままでは、社会福祉基礎構造改革の理念が棚上げにされ、利用者本位の制度の仕組みから大きくかけ離れていくのではないかと思わざるを得ません。
厚生労働省は、東京都が障害の重い人たちの地域社会での自立生活を支えていくために、国や他の自治体にさきがけてつくった「全身性障害者等介護人派遣事業」を支援費制度に組み入れていく方向を示しています。こうした新たな状況が、障害の重い人たちの生活にどのような影響を及ぼすのか、危惧する仲間も少なくありません。
私たちは、支援費制度を利用者の自己決定と自己選択の尊重、利用者の自立支援という理念に沿った制度にしていかなければならないと考えています。
支援費制度が障害の重い人たちの地域における自立生活を支え、自己決定・自己選択の理念を実現するものとなっていくために、東京都は、全国の自治体をリードする姿勢で地域の自立生活支援に一層取組んでいくことが重要であると考えます。
つきましては、以下の要望事項について積極的な検討を行っていただき、東京都としての見解を明らかにされることを要望致します。
【要望事項】
1.利用者の費用負担について
1986年(昭和61年)及び88年(昭和63年)当時の「施設費用徴収」に関する東京都と障害者団体との確認事項を支援費制度実施にあたっても堅持し、利用者の費用徴収と「扶養義務者の範囲」の問題については、従来どおり、東京都の考え方と取扱いを継続していただきたい。
(理由)
1986年、国は障害基礎年金制度の創設に伴い、身体障害者更生援護施設における費用徴収制度をスタートさせました。ところが利用者本人のみならず、扶養義務者からも費用徴収をおこなうこととなり、私たち障害のある当事者団体の多くは、「障害の重い人を親への隷属と依存を強いるもの」として、「扶養義務者からの徴収はおこなわないこと」を強く国に求めるとともに、東京都に対しても同様の要求を繰り返しおこなっていきました。
当時、東京都福祉局長と障害当事者団体、東京都区職員労働組合民生局支部の三者の間で交わされた1986年(昭和61年)6月19日付の確認書の1では、「扶養義務者の範囲については、親を含めることについては問題があることを認識する。その認識のうえに立って、政府予算編成にかかわる要望等の機会を通じて、都として国に対して要望を行うなど努力をする。」と言明しています。さらに1988年(昭和63年)6月の「確認書」では、この考え方に立って、都としての独自の基準を明示されました。これらの障害者団体の思いをくみとった東京都の判断と施策が、「扶養義務者から親ときょうだいをはずす」という画期的な制度改革につながっていきました。
東京都においては、1986年に交わされた東京都と障害者団体、東京都区職員労働組合民生局支部の三者による「確認書」と、88年の障害者団体との「確認書」の根底にある障害者の親・きょうだいからの独立に向けた施策の方向性を堅持することは、支援費制度の理念として明記されている「利用者の自立支援」という観点からも一層重要になっています。
2.「全身性障害者介護人派遣事業」に関して
「全身性障害者介護人派遣事業」と今回の支援費制度がどのような関連をもつのか、明らかにしていただきたい。また、「全身性障害者介護人派遣事業」のさらなる充実に向けて、下記の点について要望いたします。
@ 「全身性障害者介護人派遣事業」の内容は、現行のホームヘルパー制度が実施している「身辺介助」「家事援助」「外出援助」につづく4番目のサービス類型として、障害者の社会参加を含む総合的な生活支援のためにどうしても欠かすことのできない重要なサービスであるという認識に基づき、東京都としての実施要綱を作成すること。
なお、当該事業の対象者の範囲に関しては、年齢の引き下げなどの見直しを図ること。
A 東京都として作成した「全身性障害者介護人派遣事業」に関する実施要綱の内容については、区市町村及び関係者に対して周知、徹底を図ること。
その際には、利用者の多様な生活上のニーズに基づく社会参加支援サービスの内容として、就労、18歳の障害をもつ学生を含む就学の援助をはじめ、社会活動、文化的・創造的活動、スポーツ、レクリエーション、ボランティア活動、旅行等の援助ならびに点訳、代筆等のコミュニケーションの援助等が含まれることを明確にすること。
B 国においては、「全身性障害者等介護人派遣事業」のヘルパーの資格要件の取扱いについて、02年7月16日付の厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部「事務連絡」(厚生労働大臣が定める居宅介護従業者の資格要件の取扱いについて)に記されている「ただし、下記の者については、居宅介護従業者の養成研修の課程を修了した者とみなすものとする」としている。
都においては、この考え方をさらにおしすすめ、利用者の意思に基づき従来どおりの対応をすること。
C 「全身性障害者等介護人派遣事業」の資格要件を満たした自薦ヘルパーの登録において、利用者が希望する指定事業者が存在しない場合は、従来どおり、利用者が居住する区市町村に登録を行うことができるようにすること。
3.地域生活への移行について
支援費制度の実施にあたっては、施設入所者の地域生活への移行に向けた取組みが推進できるよう、積極的な基盤整備を図ることが必要であるという観点から、下記の点について実施していただきたい。
@ 施設入所者が定期的に地域で生活することを希望する場合、居宅生活支援サービスを支援費制度によって提供できないときには、東京都の単独事業として財政措置を行ない、適切なサービスを実施すること。
A 都外施設の入所者が東京都内での生活を希望する場合、本人の意向を尊重し、グループホームや自立生活体験室の設置等によって、地域生活が具体的に可能になる条件整備を早急に行うこと。
(理由)
本来、支援費制度が利用契約制度である以上、利用者が自分の生活の場を選び決めることができる適切な情報提供が行われ、その上で生活の場をどうするのか、本人の意向を確認することが大前提であるはずです。しかし、すでに施設に入所している利用者に対しては、この最も重要な点が実質上、無視されているのが現状です。利用者本人の意向を無視して支援費制度が実施されるとすれば、措置制度と何ら変わることのない、むしろ改悪につながる危険性をはらんでいます。
また、施設を出て地域生活が軌道にのるまでには、利用者本人の意向に基づいて、地域生活を体験しながら「施設に戻る」ことができる循環型の利用方式を可能とする利用者本位の濃密な相談窓口と支援体制が必要です。
支援費の設定については、「地域生活支援の一環」という観点から、地域における自立生活の実践や社会資源との連携を通じて進めていくことが重要です。
以上