2001年12月7日

厚生労働大臣 坂口 力  様

DPI(障害者インターナショナル)
日本会議 議長 山 田  昭 義

支援費制度に関する緊急要望書

 DPI(障害者インターナショナル)は、すべての障害者の権利と自立生活の確立をめざして活動している団体であり、国際障害者年の1981年に障害をもつ当事者の「われら自身の声」をスローガンとして結成されました。現在150ケ国をこえる国々にDPIの国内会議が結成され、障害当事者による国際的な協力関係づくりに向けて努力を重ねており、国連において障害者関連の諮問団体として認知されています。
 DPI日本会議は、1986年に日本における国内会議として結成されて以後、障害者の完全参加と平等、人権の確立にむけて必要な諸活動を展開しています。
2003年から多くの障害者福祉サービスが「措置制度」から「利用契約型」である「支援費支給方式」に変わることになっています。しかし、移行に当たって多くの問題点がそのままにされており、私たちDPI日本会議からも「支援費制度に関する意見書」を提出したところです。
 その後、「支援費事務大要Q&A」が10月に出されましたが、基本的な問題点は解決されているとは言えません。前回の意見書に続いて、特に緊急性の高い項目についてあらためて要望するものです。

1.支援費支給決定の手続きにおける利用者への情報提供と相談体制について
1)「事務大要」では「基本的な仕組み」として「(1) 障害者福祉サービスの利用について支援費支給を希望する者は、必要に応じて適切なサービス選択のための相談支援を受け、市町村に支援費支給の申請を行う」と、市町村への支援費申請が最初に来ています。しかし、「事務大要」以前の説明では、「障害者福祉サービスの利用について支援費支給を希望する者は、指定事業者に直接に利用の申込みを行う」ということが最初に来ていました。今回の支援費制度の導入に当たっての理念である「利用者本位」「選べる制度」という点から考えると、「単なる順番」にとどまらない、重要な変更であると言わなければなりません。特に、後述の通り今回「支援費決定の勘案事項」に「当該指定居宅支援の提供体制の整備の状況」が付け加わったことと重ね合わせると、サービス提供体制の不備を理由に、支援費支給への制限を市町村が行うのではないかと危惧せざるを得ません。障害者本人のニードと、それに対応したサービス提供を行う事業者(基準該当サービスも含む)との契約を尊重し、それに見合った支援費を市町村が支給するという基本的な流れ、を明確にして下さい。
2)情報提供については、利用者側がいつでも相談しやすい窓口が自分の身近なところに存在していることが最も重要な条件です。相談体制については、利用者が必要に応じていつでも相談できる体制づくりが必要であり、そのルートと窓口を当事者団体が行う市町村生活支援事業等の相談支援事業等が担っていることについて、もっと明確に示して下さい。
3)また、この間、障害者ケアマネジメントについて検討が進められてきました。その基本理念である「障害者ニード優先」「セルフマネジメントの尊重」「エンパワメント」「社会資源の開発」といった視点を支援費決定においても尊重することを明確にして下さい。また、市町村の職員研修プログラムは、これらの基本視点の重要性を十分盛り込んだものとして下さい。

2.支援費支給決定の際の勘案事項について
1)「介護を行う者の状況」が勘案事項に明記されたことは、基礎構造改革の基本理念と大きく矛盾することになり、これでは家族の可能な範囲における介護負担を想定した観点が含まれ、利用者本人の自立支援の方向とは逆行することになりかねません。
支援費支給を決定する際の付加要件として、「介護を行う者の状況」を勘案する場合には、少なくとも同居親族の介護から離れていくための、本人の意向と具体的必要性にそった支援計画の策定を行うことを勘案事項に明記するべきですが、基本的に「介護を行う者の状況」は、勘案事項から削除するべきです。
2)今回、新たに「当該指定居宅支援の提供体制の整備の状況」が勘案事項に加えられたことは、支援費制度の変質につながりかねない点であると考えます。
 これまでの措置制度の中では、ともすればヘルパーの人員やサービス提供体制の確保の不十分性がサービス制限の理由にされてきましたが、この「提供体制の整備の状況」は、そうした措置制度下での決定を追認するものです。措置制度からの転換を掲げ、「支援費支給方式」では「利用者本位」「選べる制度」を理念に検討が進められてきたにもかかわらず「提供体制の整備の状況」
を支給量決定の勘案事項の中に入れることは、その根幹に関わる大きな問題であり、直ちにこの項目の全文削除を求めます。
3)また、上記の項目の中で記入されている「支給量決定の公平性を確保する」とは何を意味するのか、まったく不明です。その後、各種会合において「その市で10しかないサービス量を1人の利用者が8まで使えてしまうような支給は公平性の点からも勘案しなければならない」等の説明が厚生労働省の担当官によってなされています。これでは、長時間介護を必要とする重度障害者の地域生活を否定しかねない説明になっています。ここ数年、「介護サービス量の上限を撤廃する」と主管課長会議等で指示されてきたことと、大きく矛盾した説明になっています。上記項目の削除とあわせて、これまでの「介護サービス量の上限撤廃」の指示に沿った説明を、再度、各自治体担当者に対して行うことを求めるものです。
4)今回の事務大要では、「基準該当サービス」の事務手続が示されました。しかし、上記のように「当該指定居宅支援体制の整備状況」を勘案事項に入れてしまえば、市町村が「特例居宅支援費を支給する必要性を認める」こと自体がなくなるのではないでしょうか。支援費支給決定に当たっては、障害者のニードを中心に置き、指定事業者のサービスだけではカバーできない場合は基準該当サービスも積極的に活用した上での支援費決定を行うことを市町村に示して下さい。特に、後述するように、この間、言語障害を持つ場合のコミュニケーション上の配慮や微妙な体位変換が必要な全身性障害者への介護サービスは、いわゆる自薦ヘルパーという形で充実が進められてきました。そうした一人ひとりの障害の特性、ニードに対応した介護者を確保していく上でも基準該当サービスの積極的活用は重要であると考えます。

3.「利用者負担」と「扶養義務者の範囲」について
 支援費制度における「利用者負担」については、これまで扶養義務問題が障害者の自立を阻む大きな要因であったこと、そして扶養義務者も含めた形での費用徴収が本人のニードとは無関係に本人に対するサービスの制限になっていたことを踏まえるべきです。基本的考え方として、扶養義務制度の撤廃とともに、3審議会合同企画分科会答申や社会福祉法成立時の付帯決議でも指摘されている障害者の自立、自己決定の尊重という観点から、利用者負担については、利用者本人の収入を原則とすることを求めます。
「扶養義務者の範囲」については、当面、少なくとも居宅サービスにおける「生計中心者の所得」から、親、兄弟を除外することが必要です。


4.指定居宅支援事業者の指定基準の緩和について
1)「多様な事業主体の参入」と地域におけるきめ細やかなサービスの提供の促進という観点から、指定居宅支援事業者の基準の緩和を図ることが述べられている一方で、ホームヘルパーの資格要件の緩和については、何も触れられていません。
本来、最も重要なことは、基準に定められた形式的な資格の有無よりも、当該のヘルパー(介助者)がどれだけ障害者一人ひとりのニードに対応できているかという点です。特に、言語障害を持つ者とのコミュニケーション支援や、細やかな体位変換が必要な全身性障害者の介護は、一人ひとり違いがあります。そうした一人ひとりのニードに対応できているかどうかの方が、利用する障害者にとっては、重要な介護者選択の基準なのです。障害者のニードに対応した介護サービスの充実、介護者の確保という視点から、障害者の介護経験を重視した指定基準の設定を行って下さい。
2)1)で述べた通り、私たちは一般的な資格の有無よりも、一人ひとりの障害者のニードに対応できる介護者確保の方法が重要であり、基本であると考えます。この間、各自治体で進められてきた全身性障害者介護人派遣事業や自薦ヘルパーが進められ、その中で介護者が確保されてきました。もし、が支援費支給制度の導入により、ヘルパー資格を持っていないことを理由に介護登録できないようになるならば、介護者確保に困難を来し大混乱を生むことにもなりかねません。この間の協議では、ヘルパー資格を求める理由として、「介護者の質の確保」が言われてきました。しかし、「介護者の質の確保」が課題ならば、例えば、現在のガイドヘルパー研修のように20時間程度の研修で十分行えるはずです。実際に障害者の介護に入っている経験の評価を前提にした上で、現在のガイドヘルパー研修程度にすべきであると考えます。

以上

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