2001年8月6日

東京都教育委員会 
教育長 横 山  洋 吉  殿

DPI(障害者インターナショナル)日本会議
議長 山 田  昭 義
〒101-0062 
東京都千代田区神田駿河台3-2-11総評会館内
TEL 03-5256-5365 FAX 03-5256-0414

都立養護学校での新しい歴史教科書をつくる会教科書の採択に反対する要望書

 貴職におかれましては、日頃より東京都の教育行政についてご尽力されていることに敬意を表します。

 私たち、DPI(障害者インターナショナル)日本会議は、障害者の完全参加と平等、人権確立を目指して活動している国際組織で、国連経済社会理事会、WHO、ILOなどの国連諸機関での諮問団体として位置づけられており、国連総会のオブザーバー資格をもつ団体としてさまざまな活動を展開しております。

 私たちは、東京に事務局をおき、障害当事者の立場から人権確立をめざしている団体として、貴教育委員会が教科書採択にあたり、平和と人権の理念にもとづいた公正な教科書採択を行うことを強く求めるものです。 

 私たちは、先日の新聞報道により、7月26日に開催された貴教育委員会において、都立養護学校の歴史と公民の授業で、「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史及び公民の教科書(扶桑社)が、採用される教科書の候補にあがっていることを知り、驚きとともに強い反対の意思を表明します。

 「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史教科書は、検定による修正後も内外から多くの基本的な誤りが指摘されており、その内容も、「韓国併合」をはじめとしたアジアへの侵略・植民地支配を正当化するなど「自国の誇り」を強調するあまり、「他国」からの視点が欠落し、植民地支配によって深刻な被害を受けた側の人々に対する明確な謝罪と戦後補償などを日本政府として今もっておこなわないことに象徴されるように、人権をないがしろにすることをますます助長するものであるといえます。

 「他国」の人々に対する加害事実に鈍感な国は、国内における歴史的、社会的差別や偏見によって人権を侵害されている障害者、在日外国人、女性、「同和」地区そして社会的マイノリティの人々に対しても、その<痛み>を理解することができなくなってしまいます。
また、「つくる会」の公民教科書(扶桑社)は、憲法9条「改正」論を展開し、核廃絶論に疑義をはさむなど、好戦的な記述が目立ち、また、「公=国家」への帰属を強調し、人権・個人の権利の制限まで説いており、平和・人権といった普遍的理念が尊重されていないなど、共生の未来を担う次世代の子どもたちを育てる教材としてバランスを欠いた教科書であることは明らかです。 

 これからの国際社会を担う子ども達が使うのには、ふさわしくない教科書だと思います。 
このような認識は、現在各地の教育委員会で「つくる会」教科書の不採択が決定されている状況をみれば、広く共有されているものだと考えることができます。

 このような多くの問題を抱えた歴史・公民教科書を、都立の養護学校が、公立学校として初の採用を決めることにどのような意味があるのでしょうか。かりに、養護学校にいる障害をもつ生徒たちは、どんなことでもおとなしく従うという先入観があって、養護学校での「教科書採択」を強行するのであれば、それはあきらかに障害者に対する差別と偏見によるものであると言わなければなりません。

 私たちは、この教科書が都立の養護学校であれば反対もなく採用されるであろうという憶測のもとに、採択が進められていく状況に強い遺憾と抗議の意を表明します。

 私たちは、以上の認識に立ち、貴職が新しい歴史教科書をつくる会(扶桑社発行)の教科書を養護学校において採択しないよう、強く要請します。 

以上

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