2001年7月27日
内閣総理大臣
障害者施策推進本部長
小 泉 純 一 郎 様
DPI(障害者インターナショナル)
日本会議 議長 山 田 昭 義
総理大臣「懇話会」と今後の障害者施策に関する要望書
DPI(障害者インターナショナル)は、障害者の完全参加と平等、人権確立を目指して活動している国際組織(150カ国をこえる加盟障害者団体で構成)であり、国連経済社会理事会、WHO、ILOなどの国連諸機関においては諮問団体として位置づけられており、国連総会のオブザーバー資格を有している障害当事者団体としてさまざまな活動を展開しています。
DPI日本会議は1986年に日本の国内団体として結成され、公共交通機関のアクセスの改善、「福祉のまちづくり条例」の全国的推進、障害者の自立を支援する介助保障、障害者に係る欠格条項の撤廃等、障害者の人権確立に向けた諸課題に取り組んでいます。
このたび、7月30日に行われる小泉内閣総理大臣と障害者団体・家族団体及び専門家等との「懇話会」に関しては、現在の障害者がおかれている社会的実態と障害当事者の思い、ニーズなどを率直な対話を通じて総理大臣自らが聞き、理解することのできる場として大きな意義があり、今後における国の障害者施策の前進に向けて障害当事者団体としても強い期待をもつものです。
しかし、本「懇話会」の招請対象となった「障害者団体が推薦する者」についての「障害者団体」の選定の考え方及びその基準について、非常に不透明であり、障害者施策の形成と当事者参画の重要性という観点からみると、DPI日本会議としては到底納得できるものとはいえません。
2002年は「アジア太平洋障害者の十年」の最終年にあたり、同時に「国連障害者の機会均等化に関する基準規則」の各国の実施状況に関するモニタリングが終了する年でもあります。国内においては、障害者基本法の制定から10周年をむかえ、「障害者対策に関する新長期計画」並びに「障害者プラン」の終了年であり、今後の障害者施策全体の行方を確定する大きな節目の年であることは、改めて言うまでもありません。
DPI日本会議は、「アジア太平洋障害者の十年」最終年フォーラム組織委員会(代表 八代英太氏)の主唱団体であり、障害種別を超えた当事者団体を構成団体とし、全国的なネットワークを形成する障害当事者団体として活動しています。そのDPI日本会議が総理大臣「懇話会」の招請における「障害者団体」の対象から除外されていることについて、DPI日本会議としては、政府の障害者施策と「当事者参画」についての基本的考え方に対して、強い疑念を表明せざるを得ません。
DPI日本会議は、このたびの総理大臣「懇話会」における「障害者団体の選定」について、政府に猛省を促すと共に、障害者基本法の見直しを含む「障害者対策に関する新長期計画」並びに「障害者プラン」検証と新「障害者プラン」策定に向けた当事者参画のあり方そのものについて、障害当事者団体の意見を踏まえて、大きく見直すことを求めます。
つきましては、障害者基本法の見直しを含む今後の障害者施策のあり方について、DPI日本会議としての考え方を提出いたしますので、積極的に検討されることを要望致します。
1 交通環境・まちづくりの整備に向けて
2 社会福祉基礎構造改革・支援費支給方式について
3 障害当事者主体の権利擁護システムの確立について
4 障害者欠格条項の撤廃に向けて
5 障害者基本法の見直しについて
(1)「高齢者・身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(交通バリアフリー法)に関しては、
1、市町村の策定する基本構想に対して、障害当事者として的確な意見提起をすることのできる障害当事者の人材を育成する研修などの機会を多様な形で奨励することが必要です。
2、「すべての段階での当事者の参画」ならびに「既存施設の改善計画の義務づけ」が必要です。
3、障害者の航空機利用が増加している実態を踏まえ、国土交通省、航空会社、空港関係者及び利用者等の連携のもとで航空機利用の権利保障とアクセスの改善にむけた施策の実施が急務です。
4、視覚障害、聴覚障害、知的障害など、交通機関を利用する上で必要な情報を得ることに大きな障害を持つ人々に対して、音声や点字によるもの、手話や文字によるもの、絵文字によるものなど多様な伝達手段を的確に配置し、情報の保障が必要です。
5、すべての移動制約者が交通機関を利用する権利を保障するための法律の改正が必要です。
(2)「高齢者・身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(ハートビル法)改正に関しては、
1、2002年の通常国会において改正が予定されていますが、法の対象範囲の拡大ならびに法令上の義務規定を組み込んでいくことが必要です。
この間の社会福祉基礎構造改革と昨年の社会福祉法成立を受けて、2003年から「利用契約型」制度(支援費支給方式)への移行がされることになっています。支援費支給方式の実施に当たっては、サービス量や支援費区分、受給者証と判定基準、利用料自己負担と扶養義務問題など、肝心な部分は未だ明らかにされず、今後の検討にゆだねられているのが実情です。
こうした点を踏まえ、以下の施策が必要です。
(1)今後の支援費支給に関する各種基準や区分等については、
1、障害者の自己決定・セルフマネジメントの尊重
2、サービス量の上限を設けないこと
3、利用料のバウチャー方式(利用者自身による金券等の直接支払い)の推進
4、利用料負担について世帯単位から個人単位への組み換え
などを実施するための条件整備を早急におこなうこと。
(2)当事者主体に基づくサービス供給体制をつくっていくために、自立生活センターや作業所等の参入を促進すること。
(3) 新しい制度の前提であるはずのサービス基盤の整備に向けて、新「障害者プラン」策定するとともに、早急に市町村障害者計画の策定・実施・見直しを進めていくこと。
社会福祉法の苦情解決の仕組みは、「福祉サービスの利用等」に限定され、障害当事者をとりまく多くの生活場面(外出・仕事・医療・入居・入店等)における差別、権利侵害の申し立てに対応できるものとはなっていません。こうした点を踏まえ、以下の施策が必要です。
(1) セルフアドボカシーを基本に、各地で当事者がかかえている苦情・権利侵害の相談に当事者の目線に立って支援する相談窓口を設置することを奨励すること。
(2) 一定の要件(相談件数、研修の取り組みなど)を満たしている障害当事者団体(NPO)による権利擁護活動については、都道府県・市町村が財政的支援を行うことができるように条件整備を図ること。
先の通常国会における改正(医師法等の関係法令〔31制度〕・道路交通法における運転免許資格)では、旧来からの「障害=損傷または欠損」という危険視を含むマイナスイメージによって、障害者を「できない対象者」と限定して明記しようとする考え方を完全には抜け出ていません。
資格等の取得に求められる本質的要件、または業務に対して「適切に行うことができない」とされてきた状態であっても、補助的な手段の導入と整備によって可能になる場合があります。
本人の個別具体的な必要性に応じた積極的な社会的サポートの提供が求められます。
こうした点を踏まえ、以下の施策が必要です。
(1)本人が必要としている補助具・機器、筆記者・通訳者等の補助者の適切な配置を講じた上で、資格の取得要件を満たしているかどうかを判断するガイドラインの策定を行うこと。
(2)障害当事者を含めた「ガイドライン策定に関する検討委員会」を設置すること。
(3)意見聴取の際には、本人の求めに応じて本人の障害に十分な理解のある医師等の専門家を同席させること。
(4)補助的手段は、公的施策によって条件整備を図ること。
国及び地方公共団体は、補助的手段の整備に係る人件費を含む必要経費等について、当該資格を取得するための教育養成機関、または資格取得後に当事者を雇用する事業者に適切な財政上の支援を行うこと。
制定後10年を迎える障害者基本法は、障害者をとりまく国際的な障害者法制の進展を含む社会環境の変化を踏まえ、障害者の権利保障の内容を明記するための抜本的な見直しが必要となっています。
見直しの要点は、
1、障害者の自立と社会参加が、障害者にとっての固有の権利であることを明記すること。
2、障害者の人権を侵害する行為や義務違反に対しては、罰則を含んだ明確な差別禁止規定を盛りこみ、当該規定に基づく人権救済機関の設置を明記すること。
3、B障害者に関わる政策の立案から決定に至る全ての過程に障害者自身の参加を保障し、当事者の意見を十分に反映させるシステムを創ること。
4、障害者の存在そのものの否定につながりかねない「発生予防」の条項を削除すること。
5、社会からの隔離と差別を解消するために、医療モデルから社会モデルに障害の定義を見直すこと。
6、精神障害者や知的障害者を含め、障害種別ごとの福祉サービスの格差を是正すること。
7、市町村障害者計画の策定については、義務規定にすること。
8、障害児教育については、統合教育を基本とする制度に変更し、一人一人の子どものニーズに応じた人的、物的支援策を講じること。
以上