2000年1月15日
高齢者・身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律案(仮称)の骨子案に対する要望書
DPI 日本会議
東京都千代田区神田駿河台3−2−11
総評会館内
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要約
平等な社会参加への基盤整備、基本的人権の実現という言明が必要
二自宅から目的地までの切れ目ない整備のために、代替移動手段を
名称を「公共交通機関における移動の円滑化の促進に関する法律」とすべき
利用者の声を反映する仕組みの必要性
円滑に移動」の定義の明確化を
規制緩和を
一列車一車両原則を
事後評価とその結果を次の整備に活かす仕組みを
新設の旅客施設についての整備の義務化は評価。
既存の旅客施設については努力義務ではなく、原則的には整備を打ち出し、除外規定で柔軟に対処すべき
上記の除外規定については、除外要件の明確化が必要
重要な既存旅客施設は、整備を行う方向でさらに詳細な検討を。その検討には、利用者の関与を
新造車両等について、努力義務ではなく、原則整備、除外規定で柔軟に対処。除外要件の明確化が必要
運輸大臣の勧告等の措置について、要件の明確化が必要
利用者の意向の尊重を
特定事業計画の策定に、利用者の参画を
国および地方公共団体に対して努力義務では訴える力が弱い
国は整備状況についての全国規模の調査を継続的に行うべき
5の一と同様。国の考え方を国民に明らかに
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このたび運輸省が国会への提出を予定している標記法律案は、これまで移動環境の整備が不充分なために社会参加をあきらめざるを得なかった人たちにとって好ましい影響を与え、「完全参加と平等」をかかげた1981年の国際障害者年以来の世界的な潮流にも沿うものであるべきだと考えます。
法律を制定しようとするからには、その法律が実効性を持ち、社会の変革を促すものでなければならないわけですし、そうでなければわざわざ法律を制定する意味がありません。ですから本法律はこの問題に対する我が国の決意表明とも言えるもので、そういう観点からすると、この骨子案ではまだ不明確な点が多く、その点については国会審議を通じて明らかにされなければならないものと考えます。
世界の人々に胸を張れるようなよりよい法律を作るために、以下の点について運輸省の考えをただし、必要な修正を加えていく必要があると思います。
1.目的について
一、障害を持つ人が交通環境改善に強い関心を持っているのは、それが就労や就学をはじめとして日常生活を営む上で欠かせない条件であるからです。国においては1981年の国際障害者年において「完全参加と平等」という基本理念を支持し、その後もその理念に沿った諸施策を展開してきているのですから、それらの積み重ねを踏まえ、例えば「(前略)環境の整備をはかり、もって平等な社会参加への基盤を整備することによって基本的人権を実現し、公共の福祉の増進に資すること目的とする」というふうに目的を高らかにうたい、内外に国の姿勢を明確に示していただきたいと思います。
二、上記のように移動は社会に関わる手段としてきわめて基礎的なものであり、その実現のためには自宅から目的地までを切れ目なくつなぐ整備が必要です。本法案では鉄道、バス、旅客船、空港について言及されていますが、大量移動手段を利用できない人への代替移動手段についての規定がなければ、このような切れ目ない整備が実現できません。
三、朝日新聞の社説(*)によると、全盲の人の2/3が駅のプラットホームから転落した経験を持つと伝えています。このように日々、生命の危険と隣り合わせで公共交通機関を利用している人もいるのです。従ってここで述べている「円滑に移動」という方針には、そのような危険の防止や見やすく理解しやすい表示、確実な情報伝達なども含まれていなければ、具体的には実現されません。以上のことを踏まえると本法は高齢者・身体障害者に限るべきではなく、利用者一般の円滑な移動について言及すべきだと考えます。従って本法の名称は「公共交通機関における移動の円滑化の促進に関する法律」とするほうが、より「公共の福祉の増進に資する」と言うことができます。
(*)1995年12月7日「障害を乗り越えなくても」
2.基本方針について
一、これまでの経験から、様々な施策においては利用者の声を反映しなければ質的向上を図ることが困難であるということは明らかです。限られた財源を有効に生かすためにも利用者の参画が必要で、基本方針を策定する委員に利用者の代表を入れると共に、基礎的調査や公聴によって幅広い利用者の声を聞き反映する作業が行われるような仕組みを設定する必要があります。
二、(1)のAで述べましたように、「円滑」という言葉に含まれるものはきわめて多様です。本項によると、基本方針に定める事項として「移動円滑化の基本的な方向」が挙げられていますが、何をもって「移動円滑化」と見なすかという点について本法の考え方を明確にする必要があると思います。
三、既存駅へのエレベーターの設置において、構造・工法上の制約とともに価格面の問題も不設置の理由としてあげられます。機器の価格を下げ、設置をより容易にするための規制緩和、維持管理経費の削減につながる規制緩和が必要だと思います。
四、アメリカのADA(障害をもつアメリカ人法)では「一列車一車両原則」を、既に1990年に確立しています。これは一編成の列車の中の少なくとも一車両は障害をもつ人に利用できるものにするという考えです。ADAから遅れること10年、我が国でも整備の際の一つの目標として導入すべきものだと考えられます。そのためにもこの原則の確立を基本方針に盛り込む必要があります。
五、整備後は、当初の目的が達成されているか、予想していなかった問題点はないかなど、利用者を含めての事後評価がきわめて重要で、事後評価とその結果を次の整備に活かす仕組みを基本方針に盛り込む必要があります。
3.公共交通機関に係る措置について
一、本項の(1)のAでは既存の旅客設備について述べられていますが、「措置を講ずるよう”努める”ものとする」となっています。もちろん構造・工法上の制約から、整備が不可能な場合も多々あろうかとは思いますが、努力義務ではあくまでも交通事業者の意向が主であり、整備が不可能と納得できる客観的な条件を明確にすることができません。そのためここは「(前略)既設の旅客施設については、やむを得ない場合を除き、(中略)移動円滑化のための措置を講ずるものとする」というように原則的には整備を打ち出し、除外規定で柔軟に対処する方が明確だと思われます。
二、そして上記の除外規定について、どのような要件を満たせば整備しないことが正当化されるのか、その要件に工事費用は含まれるのかなどについて、明らかにされる必要があります。
三、既存の旅客施設が上記の除外要件に該当するとしても、その施設がその地域の交通体系の上で重要な役割を担っている場合は、整備を行う方向でさらに詳細な検討を加える必要があります。そして、その施設が地域の交通体系の上で重要な役割を持っているかどうか、どうすれば整備ができるかなどの検討には、利用者が初期の段階から関わる仕組みが必要です。
四、本項の(2)の新造車両等についての言及でも努力義務となっていますが、ここでもこれまで述べて参りましたように、原則整備、除外規定で柔軟に対処、除外要件の明確化が必要です。
五、本項の(3)では勧告等について述べていますが、ここでは勧告等が運輸大臣の裁量とされています。従って、どのような要件を満たせば勧告等の措置をとるべきだと判断するのかが明確にされる必要があると思います。
4.地域における一体的な移動円滑化について
一、(1)整備計画では、「(前略)交通事業者、特定施設管理者の意向を反映した上で(後略)」と述べていますが、ここではやはり利用者の意見が含まれなければならないと考えます。従ってここは、「(前略)交通事業者、特定施設管理者、利用者の意向を反映した上で(後略)」としていただく必要があります。
二、(2)特定事業計画の策定に当たっては2の一で述べましたように、利用者の参画を押し進める必要があります。
5.国および地方公共団体の責務について
一、ここでは国および地方公共団体に対して努力義務を求めています。しかし国民に対して社会の目指す方向を示すべき国や地方公共団体が努力義務では、訴える力が弱いと考えられます。アメリカのADA(障害をもつアメリカ人法)が国際的に高く評価されているのは強制力を持っている点だと思われます。国際社会に我が国の考えを表明するためにも、努力義務では訴える力がはなはだ弱いと考えられます。
二、整備を効果的にするために、国は整備状況についての全国規模の調査を継続的に行う必要があります。
6.交通事業者の責務について
一、ここでも(1)、(2)共に努力義務となっていますが、すでに3で移動円滑化に対して交通事業者が行うべき事が示されているわけですから、ここで努力義務なのは矛盾していると思います。現実問題として整備が短時間で進むことには多くの困難があると思います。ですからこそ、時間がかかるかもしれないけれどこういう方向でやって行きますよといった国の考え方を国民に明らかにする必要があるのではないでしょうか。
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私たちは全ての整備を一瞬にして行っていただきたいと求めているのではありません。時間やお金がかかり困難の大きいことだからこそ、国の考えを明確にしていただき、国としての方向性を示した法律にしていただきたいと切望しているのです。
(以上)
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