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第6回DPI世界会議札幌大会報告集 世界の障害者―われら自身の声

トップページ活動内容活動方針と前年度活動報告2006年度活動方針
 

1.重点課題

重点課題 1)地域生活支援(介助保障等)

 4月から「自立支援法」が施行され、応益負担が始まり当事者・関係者への負担がのしかかる中、サービス利用や授産施設への通所を断念せざるを得ない等の具体的な影響も出始めている。
 10月からは新支給決定、新サービス体系(介護給付・訓練給付と地域生活支援事業)が始まり、さらに、障害者の生活全体に大きな影響がもたらされることになる。 今後、障害程度区分の判定−支給決定がなされていく中で、サービス低下を引き起こさないようにしなければならない。また、移動支援や地域活動支援センター等、障害者の地域生活にとって重要な事業が地域生活支援事業として再編されることになるが、その政省令に対する働きかけも求められる。
 新支給決定・新サービス体系の施行を前に、厚生労働省に対する交渉・行動を行うとともに、必要に応じて国会でも取り上げられるように政党・議員への働きかけも進めていく。 「自立支援法」の施行の影響の検証と問題提起のためにも、障害程度区分や支給決定の状況、地域生活支援事業についての実態把握を加盟団体の協力を得ながら進めていきたい。

 具体的なサービスの支給決定や、地域生活支援事業については、実施主体となる市町村の判断によるところが大きくなってくるため、引き続き、各自治体への働きかけを強めていくことが重要である。 また、「これまでのサービスを後退させない」ことを確認していくとともに、「市町村認定審査会の設置や運用(一人ひとりのニードに基づく支給決定等)」、「利用者のニードと選択に基づく移動支援」や「地域生活の場としてのグループホームの継続」、「福祉・医療の負担見直しに対する自治体独自施策創設」等を求めていかなければならない。さらには、2006年度中に策定予定の障害福祉計画に対しても、「地域生活のためのサービス基盤整備」という観点から、重度障害者の地域生活、施設からの地域移行、谷間の障害者も含んだ施策等が重点課題として盛り込まれるようにしていく必要がある。
 全国大行動実行委員会に結集している団体を中心に、地域での連携を深めながら、障害種別を超えた取り組みとネットワークを強化し、「われら自身の声」を高めていく。

 一方、「介護保険制度の被保険者・受給者範囲に関する有識者会議」が、2006年3月に発足した。これは、昨年の介護保険見直しの国会で、「2009年度実施をメドに、2006年度中に結論を出すための新たな検討の場の設置」が決議されたことを受けてのものである。
 見直しで大きな影響を受ける介護サービスを利用している障害当事者が一人も入っていない委員会構成自体大きな問題である。ただ、第1回目の会合から賛否両論が平行線をたどる形となっており、最終的にどのような議論と結論になるのかは予断を許さない。

 「自立支援法」の施行に対する検証と問題提起を引き続き行っていく一方で、今後の見直しも見据えて、障害者政策研究全国集会実行委員会の活動の一環として「ポスト障害者自立支援法政策プロジェクト・チーム」を発足させた。「重度障害者の地域生活」、「施設や病院から地域生活への移行」を進めるという立場からの提案を行うべく、今後、着実な検討を進めていきたい。

 また、この間、「臓器移植法案」の見直しや「尊厳死法案」等、障害者の存在そのものを否定する優生思想に基づく法案化の動きが出てきている。とりわけ、医療費や福祉サービス抑制を進める政策動向の下、「自己責任」が強調される社会状況を背景にしているのが、その特徴である。これらの動きは、障害者の地域生活はもとより生存そのものを脅かすものであり、決して認められない。今後の動きに注視・監視しながら、必要に応じて取り組みを進めていく。

重点課題 2)障害者差別禁止法の制定に向けて

 DPI日本会議としては、障害者差別禁止法の制定に向けて主に二つの取り組みを行っている。一つは障害者政策研究全国集会実行委員会、もう一つはJDF関連の取り組みである。

○政策研関連の取り組み
 政策研では、DPI日本会議が「差別禁止法」作業チームの事務局を担当し、障害をもつ当事者の視点に立った差別禁止法要綱案の作成と見直し作業を続けている。今後は、「要綱案」の普及のために簡略版のパンフレットを活用して、なぜ差別禁止法が必要なのかという理解を広げていくことが不可欠になっている。
 その中で、障害者権利条約の策定作業が大詰めの段階を迎えていることを踏まえ、とくに、障害者差別禁止法の中核的要素となる「差別の定義」(条約第2条)に関する「直接差別と間接差別」、「合理的配慮の欠如」の三つのキーワードを軸に、差別事例の収集と整理を行うことが極めて重要な課題になる。 こうした差別事例の収集と整理を行いながら、地域ごとで、障害をもつ人の生活場面で、具体的にどういうことが直接または間接差別に当たるのかという議論を積極的に巻き起こし、地域の障害者団体間の共通理解をつくっていくことを通じて、行政関係者や国会議員や地方議会議員との連携をはかり、地方自治体の条例づくりの気運を盛り上げていくことが必要になっている。 こうした地域レベルの動きを各地でつくりだし全国的に広げていくことが、2009年に予定されている障害者基本法の見直しと相まって差別禁止法にかかわる動向に大きな影響を与えていくことになる。「2009年」にむけた差別禁止法制定の活動プランを検討し実践していくことを通じて、条例制定等の具体的課題を結集軸とした地方での差別禁止法制定運動を早急に立ち上げる必要性がある。

○JDF関連の取り組み
 JDFに設置された国内課題専門委員会の「障害者の差別禁止と権利法制に関する専門委員会」では、障害を持つ者に対する新たな権利法制に関して、人権擁護法案・韓国の差別禁止法案・「日弁連の動き」・障害者政策全国研究集会「差別禁止法要綱案」・JD高藤私案等を学習してきた。また、国連の障害者権利条約策定の動きをにらみながら、「障害者差別禁止法への論点整理」(2006年3月以下、論点整理と略す)を作成した。
 この「論点整理」では、今後の進め方として、主に@差別禁止条例を各自治体でつくらせる取り組みを行う。A国連における権利条約の動向を見据えながら、権利条約をどう国内に反映させていくかという二つの視点にたって整理してきた。また、この「論点整理」をもとに試案の作成を目標にしながらJDF参加団体はもとより、多くの関係者との対話を進めていく機会をつくる必要がある。 そして、私たちが目指す新たな権利法制の骨格作りに力を入れていくべきである、ということも提起されている。DPI日本会議としても、こうした緩やかではあるけれどもJDFの新しい連携の中で重要な役割を粘り強く果たしていくことが求められている。

重点課題 3)交通バリアフリー法見直しに向けて

 2000年に成立した交通バリアフリー法は、各種公共交通機関のバリアフリー化整備を同法成立以前に比較して大幅に進めた。また、これまで交通のバリアフリー化計画は、国の主導の下に行われてきたが、同法により一定の条件がそろえば、市区町村が交通バリアフリーに関する基本構想を策定できるようになった。 だが、法施行後6年目を迎える2005年12月現在でも、策定された基本構想は226カ所(197市町村)にとどまっている。同法の基本方針では2010年までに一日の乗降客5,000人以上の鉄道駅舎の100%バリアフリー化が打ち出されているが、このペースでは到底実現はおぼつかない。
 2006年の今年は、同法の附則に取り入れられた同法の見直しの時期に当たる。法改正の後の、基本方針や移動円滑化基準、ガイドラインの見直し等も含めると、2006年度末までの継続した取り組みが重要になる。
 バリアフリー法成立後、問題点として浮上してきたのは、以下の諸点である。

  1. 同法では、「移動権」が明記されていないために、一定のバリアフリー設備があるにもかかわらず、障害者の社会参加に対する無理解や偏見による不適切な接遇で「乗車拒否・利用拒否」が後を立たない。また、対象の表記が、障害者の内、身体障害者だけに限定されていた。
  2. 駅や車両における設備の未設置や不適切な接遇により、障害者が怪我や重症を負う事故が生じている。
    (例)「車いす対応エスカレーター」からの転落事故・チェアーメイト(キャタピラ式階段昇降機)による転倒事故・ノンステップバスのスロープ設置ミスによる転倒事故や、依然として繰り返されている視覚障害者や車いす使用障害者のホームからの転落事故等。
  3. 交通バリアフリー化進展の一つの指標であるエレベーター設置駅数・ノンステップバス導入台数の地域格差が大きく広がった。路線バス、地下鉄、鉄道等がバリアフリー化されている地域とそうでない地域との格差が大きくなった。
    鉄道や路線バスの移動手段それ自体の廃止や、無人駅化、ワンマンカー化、車いす対応バス路線における時刻の非固定・非表示など、新たなバリアの発生ともいえる問題点が浮き彫りになった。
  4. 市区町村における基本構想は200近く策定されているが、事業計画等も含めた実質的な当事者参画については、あまり進んでいない。

以上の問題点を解決するために、今年度は、下記の諸活動を行う。

○【政策提言活動】として
 多くの障害者及び障害者団体と共に交通バリアフリー新法について、よく理解し、問題点を議論し、問題を共有化することにより、よりよい交通バリアフリー新法にしていく。

  1. 「移動の権利」と「乗車拒否・利用拒否の差別性について」の明確化
  2. 障害種別を越えたバリアフリー化対応や障害者以外の高齢者、妊産婦、乳母車使用者、こども、外国人等のバリアフリー化の明確化
  3. 既存駅舎・車両及び建築物への改善に関する実効性の確保
  4. STS(移動サービス)運営協議会への参画
  5. ノンステップバスの標準化やホームドア、可動式ホーム柵設置推進等に向け、移動円滑化基準検討委員会等への参画を要求
  6. 移動制約者の利用に際しての接遇等及び改善サービスの提案
  7. 見直し・基本計画など全てにおけるプロセスへの当事者参画の推進


○【調査研究活動】として
以下の調査および付随する活動を行う。

  1. 交通バリアフリー新法の下で、国内の障害者は、どのような問題に直面しているのか、地域別アクセス力の数値化等の第一次定点観測調査
  2. 「乗車拒否・利用拒否」「転落・転倒等」問題について研究・分析を行い、移動権の必要性と安全性について訴える活動
  3. 交通バリアフリー設備の地域格差を縮める方策の研究
  4. C既に策定公表された基本構想の問題点・評価を行い、残された基本構想策定対象に活かす。

重点課題 4)精神障害者の地域生活と人権の確立に向けて

 「介護保険との統合」−「グランドデザイン」−「自立支援法」という尋常ではない国の障害者施策の変更に対抗して、精神障害者の立場から、身体・知的・難病の仲間たちとともに「私たちのこと抜きに私たちのことを決めるな!」を合い言葉に、集会、デモ、厚労省との協議や座り込みなど反対運動を展開してきた。 また、私たち障害当事者団体、家族会、支援者とともに、「通院公費負担制度の存続を求める署名」活動を全国展開し、2005年1月から2月の2カ月間で23万人の署名を集め厚労省に提出した。
 また、各地でも、精神障害者からの様々な動きが取り組まれてきた。大阪では、精神障害当事者に加え、家族会、支援者、他障害の団体とともに「精神障害者福祉ボトムアップ連絡会」を形成し、定期的な会議を開き情報の共有に努めるとともに、福祉サービスの抑制に走る国・自治体に対して、精神障害者福祉の充実を求める取り組みと「自立支援法」に関する公開学習会を開催してきた。他の団体とも連携して数千名規模の取り組みへとつなげていった。
 「自立支援法」については、精神障害者に関して「3障害共通」ということが喧伝されてきたが、現実には極めて重大な問題を内包している制度と言わざるをえない。以下の点について、精神障害当事者の立場から取り組んでいきたい。

  1. 応益負担について、一部の自治体では通院医療費・ヘルパーの利用料への助成が制度化される動きがあるが、多くの自治体では国制度に沿った形で実施されている。そのため、医療、福祉サービスの利用抑制が懸念される。今後も、自治体での減免制度などを求めていく。
  2. 精神障害者の地域生活には、「ありのままの自分を受け入れてくれる居場所」の確保が重要であるにも関わらず、「自立支援法」の中では全く保障されていない。地域活動や「居場所」の確保に向けた取り組みと施策に対する提起を行っていく。
  3. 契約制度への移行が言われているが、当事者主権は認められていない。精神保健福祉法において保護者制度は残存している状態である。また、10年間で7万2千人の精神障害者退院促進を打ち出しているが、絵に描いた餅に終わらないか危惧する。亡くなる人々、病院敷地内の老健施設や地域移行型ホームをもって「退院」とすることは認められない。退院促進には地道な取り組みが必要であり、支援のためのマンパワーが問われる。 そうした点をふまえて、退院促進の具体化とピアサポート活動の制度化を求めていく。そのため、「地域移行型グループホームは認めないで!ピアサポートセンター・ピアサポート活動の制度化」を要望する署名活動を全国の仲間とともに展開する。
  4. 「自立支援法」でグループホーム・ケアホームの大規模化と世話人体制の削減は、深刻な影響を与えている。また、ホームヘルプや移動介護の利用制限等も行われることになり、「地域での住まい」から大きく変質しかねない。ましてや、施設や病院内の敷地内ホームや「退院支援施設」は決して認められるものではない。 地域での住まいの場としてのグループホームを守るとともに、公営住宅・民間賃貸住宅を含めた地域での住まいの確保が、退院促進を進める上からも重要である。地域での住まい確保に向けて、公営住宅の単身入居や公的保証人制度、居住サポート等、地域での住まいの確保策を求めていく。
  5. 障害程度区分認定において、「生活上の困難が一見見えづらく、波もある」という精神障害は、軽い程度区分にされる可能性がきわめて高い。自治体によっては相談支援事業のピアカウンセラーや精神の当事者団体から認定審査会の委員として参加を勝ち取っているところもある。さらに、当事者参画を進めていきながら、今後進められる認定審査において、現在受けているサービスの水準が後退することのないように、また、当事者が希望するサービスが受けられないことのないように取り組んでいく。
  6. 精神障害者手帳は、差別的な状況の中でメリットが少なく、使いにくいものであった。障害者手帳を種別を超えた共通のものとし、サービスの受給権を明確にした障害当事者にとって使いやすいものに変えていこう。
  7. 障害者雇用促進法改正で、精神障害者が対象に加えられた。しかし、働き方の多様性を認めた支援でなければ、かえってプレッシャーを与えられ、再発や症状の悪化等をもたらすことにもなりかねない。ライフステージや生き方、働き方の多様性、当事者の自己決定を認め、地域生活を実現していく法制度化を求めていく。
  8. 「心身喪失者等医療観察法」に見られるように、日本の精神障害者施策には治安・隔離主義が、その根底に横たわっている。ノーマライゼーションが言われて久しいが、未だに精神障害者に対する差別・偏見は根強い。こうした状況を打破していくためにも、障害者権利条約、差別禁止法を、障害当事者自身が中心となり、地域から巻き起こしていく。

重点課題 5)ともに生きる教育をめざして

 DPI日本会議は、障害のある子どもと無い子どもが地域の学校で共に学ぶ教育体制を創出すべく、障害者政策研究全国集会等の場で、いくつかの団体(『障害児を普通学校へ・全国連絡会』や『教育の欠格条項をなくす会準備会』等)と共に討論を進めてきた。
 さらに、今回の学校教育法に関する文科省の原則分離を前提とした「改正」に対しては上記の2団体に加えて、国民教育文化総合研究所(教育総研)等とも連携して緊急の連絡会議を結成し、文科省の「改正」に対する提案を提出した。また、各党の国会議員に対するロビー活動や署名活動等も積極的に行ってきた。
 改正学校教育法は、幼稚園、小中学校、高等学校において障害のある子どもたちに教育的支援を行うことを定めた条文があるものの、就学指導や通常学級内での支援のあり方について具体的改革をどのように講じるのか、果たしてインクルーシブ教育に向かうのか明らかにならないまま採択された。しかし、今回は十分な成果をあげることができなかったが、数年後に予定されている学校教育法の再度の見直しを視点において取り組みを継続していきたい。
 そのような運動を進める上で、DPI日本会議としては「特殊教育」から「特別支援教育」に名称を変更しただけの今回の文科省の政策を認めることはできない。また、新たに「軽度発達障害児」と名づけられた子どもたちを「特別支援教育」に囲い込むだけの能力主義的再編成にも大きな疑問を持つものである。先日、教育基本法「改正」案が国会審議入りしたが、「愛国心」「公共の精神」等の強調とともに一部のエリート育成のための能力主義をより一層強化しようとするものであり、認めるわけにはいかない。
 周知のように、1993年にスペインで採択された「サラマンカ宣言」では、全ての子どもが自分の生まれ育った地域で、同じ学校の通常学級で統合された教育内容で、共に学ぶ権利を確立する必要があることを強調している。わが国においても、養護学校義務化に前後して統合教育・共生共育を求める就学運動が急速に高まり、さらに大阪府や千葉県などで障害児の普通高校の入学制度を確立させたほか、学校のバリアフリー化や点字教科書など一部の学習条件の保障を勝ち取ってきている。
 今後とも他の諸団体とも連携しつつ、以下における諸課題に取り組んでいきたい。

  1. 今回、多くの課題を残した学校教育法改正の問題点を明確にしつつ、障害の程度によって就学先を振り分ける就学指導のあり方を撤廃させるべく取り組みを強めていく。
  2. 同時に、障害者権利条約の制定の動きと連動して、日本国内の障害者差別禁止法の制定を目指し、その中で分離教育をあらためさせる条件を盛り込ませる運動を展開する。
  3. さらに、それらの運動を通じて、原則統合を明記した学校教育法の改正実現に向けて取り組むとともに、学習条件の保障・整備を勝ち取っていく。
  4. そのためにも、障害児教育に取り組む諸団体との共闘を進めていく。

重点課題 6)国際活動・支援の推進および発展に向けて

○障害者権利条約の策定に関する取り組み
 現在、国連本部(ニューヨーク)において障害者の権利条約の策定が大詰めを迎えている。これまでの「作業部会草案」の審議を通じてまとめられた「議長草案」(2005年10月)に関する審議が第7回特別委員会(本年1月16日から2月3日)において行われ、その結果をふまえて新しい「ワーキングテキスト」が迅速に作成され公表された(障害、障害のある人、国際協力、国際モニタリング等の案文については、未提案または未協議)。
 第8回特別委員会(本年8月14日から25日)にむけては、新しい「ワーキングテキスト」に基づいて審議がおこなわれるという段階にあり、今後は、第8回から第9回(来年1月)の特別委員会における審議で山場を迎え、その後は起草委員会に委託して来年中の国連総会において採択するという可能性が強くなっている。
 現在、同条約が来年秋の国連総会で採択される可能性が高まっている中で、日本政府が批准した後、同条約の国内履行に関連して、日本においてはどのような課題があるのかを今まで以上に視野にいれながら取り組んでいくことが重要である。
 それとともに、既存の分野別(女性・子ども・人種等)の権利条約の国内履行に先行して取り組み実績を重ねてきたNGOの取り組みを学びながら、連携づくりをしていく必要がある。
 今後は、条約案の重要な論点は何か、今後それを国内法制の履行課題としてどのように取り組むかが極めて重要になっている。そのためには、第1に条約の適用範囲と履行の義務が、中央政府と地方自治体の両方に及んでいることを認識し、障害者をとりまく身近な問題とかかわりがあることを理解すること、第2に条約が今後の国内における障害者差別禁止法制や障害者施策の動きに、どのような影響と関連があるかについて認識を深めることを通じて、国内法の改訂を権利法制の観点から提言していくことが重要である。
 条約案の審議を通じて特別委員会で合意された条文案の内容を情報提供し、それが国内の障害者関係の法制度とどのように関連しているのか、差別の定義と合理的配慮の欠如との関係、教育就労等に関する論点は何か等について積極的な意見を提起し、「議員連盟」や関係省庁等に対して国内法制度の見直しにむけた共通認識をつくっていかなければならない。

○日本の当事者運動と世界の当事者運動の架け橋として
 中西正司常任委員をDPI世界評議会、DPIアジア太平洋ブロック評議会へそれぞれ財務担当役員、ブロック議長として送ってきた。
 DPI日本会議への世界からの期待は、2002年10月のDPI札幌大会の成功以降ますます高まっており、引き続き役員を送り、DPIアジア太平洋事務局の支援体制も強化したい。
 海外の当事者組織との国際協力活動も徐々に日本の当事者運動の中に浸透している。会員団体などによる国際活動にDPI日本会議が協力するケースも増えてきた。今年度も加盟団体であるAJUを通して行われているアジア支援事業を継続していく。
 今後も世界、特にアジア太平洋の障害当事者に関する情報を、機関誌やインターネット等で会員団体に届けていきたいと考えている。日本の当事者運動の経験を共有することで、世界の当事者運動の推進に貢献していきたい。

○2007年第7回DPI世界会議韓国大会の成功を目指して
 第7回DPI世界会議韓国大会は、2007年9月に開催されることになった。DPI日本会議は、2002年にDPI札幌大会を開催したが、障害種別を超えた組織作りや物理面・情報面でのバリアフリーなど多くのノウハウを蓄積している。
 韓国では、急ピッチで組織化と資金調達活動が進められている。DPI日本会議としては、韓国DPIの求めに応じながら、DPI札幌大会でのノウハウを伝え、技術的・実務的協力を行っていきたい。

○「障害と開発」の流れを当事者運動の力で
 開発分野において、近年「障害と開発」という分野が脚光を浴びている。DPI日本会議が、これまで培ってきた当事者運動としてのノウハウや経験を国際開発機関の障害者支援の取り組みに反映させていく好機である。今後は、2005年度の成果を踏まえて、国際開発機関や他の開発NGOで「障害と開発」について啓発が進むとともに、個別のプロジェクトで障害者のニードが的確に反映されることが期待される。DPI日本会議としては、今後も国際開発機関や他の開発NGOとの協力を推し進めていきたい。

○当事者リーダーの育成と自立生活運動の普及に向けて
 JICAの委託による南部アフリカ障害者の研修事業も5年目を迎え、当初の予定期間をいったん終えることになる。研修を受けた当事者リーダーたちは、国に戻ってからも活発に活動を続けている。国の開発計画に障害に関する事項を盛り込ませたり、地方政府の建物のアクセスを改善したりするなど、成果を生み出した国もある。現在、JICAとの間で、2010年まで続くアフリカ障害者の十年への貢献として、この研修をアフリカ全体に広げながら延長するよう協議を重ねている。
 タイにあるAPCD(アジア太平洋障害者センター)が行っているCBSHOD(障害当事者組織の能力構築)セミナーなど、アジア太平洋地域内での取り組みにも自立生活運動をはじめとする日本の当事者運動の経験が生かされている。パキスタンやタイでは自立生活センターが成功裡にスタートしている。今後もこうした当事者が自らの決定に基づいて生活ができるための基盤作りを支援していきたい。
 また、ダスキン研修生の受け入れもDPI日本会議事務局で引き続き行い、エンパワメントと国際的なネットワークづくりにつなげていきたい。

2.その他の事業方針

1)政策提言事業

○障害者の所得保障に関する取り組み
 自立支援法の制定によって、その必要性に対する論議が高まってきた障害者の所得保障の確立に向けた動きは、今年度あたりから具体的な検討に入るものと思われる。DPI日本会議が関わりを持って行われている「社会保障・人口問題研究所」の「障害者の所得保障と自立支援施策に関する調査研究」は2年目に入り、初年度に行った経済状況調査の分析・評価を行うことになる。さらに2006年4月より開始された全社協の加盟団体による「障害者の所得保障に関する研究委員会」も本格的な論議が展開されることとなる。 DPI日本会議としてはこれらの事業に対し、障害当事者からの意見提起を積極的に行っていく。障害者の所得保障に関しては、2007年秋頃からは何らかの動きが起こりそうな情勢にあり、DPI日本会議としては今年度内には具体的な方向性を定めるべく、積極的な論議を展開していく必要がある。
 また、無年金障害者の問題については「特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律」(2005年)の附則第2条に検討事項として、日本国籍を有していなかったため障害基礎年金の受給権を有していない障害者等に対する福祉的措置については、今後検討が加えられ、必要があると認められるときには所要の措置を講じることになっている。
 DPI日本会議としては、今後も在日外国人無年金障害者問題の解決に向けて、国会請願や厚生労働省との交渉、「無年金障害者の問題を考える議員連盟」(2002年発足)との連携などによって関係団体とともに取り組みを継続していく。

2)調査研究事業

○障害者雇用率未達成企業に対する取り組み
 今後は、「雇用人権センター」とともに、報告書(「企業の障害者雇用率未達成に関する調査報告書」)によって明らかになった課題について、就労支援機関、行政等の関係方面と協議を行うとともに、雇用率未達成企業名が開示されて以降も実雇用率と不足人数が改善されていない企業に対しては、改善に向けた申し入れ等を行っていくことを検討していく。

3)普及啓発事業

○機関誌:編集体制の強化と内容の充実
 機関誌(「DPI」)においては、今年度も昨年度に引き続いて、編集会議や(編集委員)メーリングリストの運営、編集委員の常任委員会傍聴などを通して、編集委員会の力量を強化し活動の充実化を図る。内容面においては、DPI日本会議の来年度の世界会議に向けた取り組みと世界での動きについて強化する。また、販売部数及び広告収入の増加は組織一体となって取り組んでいく。具体的には、購読会員獲得の数値目標の設定等の取り組みを進める。
 月刊紙(「われら自身の声」)については、年4回発行媒体である機関誌との役割分担をより鮮明にし、相互補完する体制を整えて、迅速な情報提供が行えるようにしていく。

○インターネットによる情報発信の充実
 現在、DPI日本会議では、「ホームページ」「ブログ」「メールマガジン」の3つの手段で、インターネットを利用した情報提供を行っている。本年度も、昨年度に引き続き内容の充実を図っていきたい。
 ホームページでは、昨年度から始めた世界本部のホームページに掲載されたニュースの翻訳のため、翻訳ボランティアを増やしていく。また、データ量が膨大になってきていることもあり、順次、内容の更新、見直しを行っていく。
 昨年度開始したブログ「Vooo!」は、加盟団体の行うイベントなどを積極的に周知するためのメディアとしてさらに活用していく。
 メールマガジンは、ホームページやブログの更新を伝えるとともに、緊急の呼びかけに活用していく。

4)権利擁護事業

○DPI障害者権利擁護センターの活動の支援
 自立支援法や特別支援教育の法定化、バリアフリー新法や住環境基本法等の制定の中、今後、地域生活の基盤・条件整備が一層大きな課題になってくる。その中で障害を理由とする不利益な取り扱い、差別、人権侵害が様々な背景の中から起こってくることがさらに予想される。
 今後は、交通アクセス・まちづくり、教育や就労または施設の利用や入居契約等の様々な日常生活の場面において、障害当事者が権利意識に立脚し、当事者の立場からどういうことが障害に基づく差別や偏見にあたるのかを明確に主張していくことが重要になっている。
 現行の仕組みや制度(苦情処理、不服申し立てに関する審査請求、法務省人権擁護局による任意調査)では、権利の救済を図ることには限界があることを踏まえ、今後は、これまで権利擁護センターに寄せられた様々な相談内容と対応、その結果などからみえてきた課題を整理した「事例集」づくりの作成を支援し、DPI日本会議が取り組む条例制定や差別禁止法に向けた運動に活用できるようにしていきたい。

5)団体育成事業

○加盟団体への支援、ネットワーク強化
 報告でも述べた通り、DPI日本会議の地方ブロックの形成は、草の根の障害者運動の結集という点からも重要である。可能な地域から、地方ブロック化に向けた準備を引き続き進めていく。特に、今回のDPI日本会議全国大会大阪集会実行委員会でつくられたネットワークを発展させて、関西におけるブロック準備会につなげていきたい。また、DPI東京行動委員会を通してより広範な組織化を図っていく。
 また、障害福祉計画やバリアフリー基本構想など、これまで以上に地域レベルでの取り組みが求められており、加盟団体の枠を超えたネットワークを強化していく。

○地域団体への支援
 今後も引き続き講師としてDPI日本会議の常任委員を派遣する等の支援を行っていく。特に加盟団体の少ない地域や地方ブロック化につながる可能性のある地域の集会等への取り組みを、強化していく。

6)その他事業

 DPI日本会議ホームページへの点字印刷ビギンの案内掲載以降、点字作成に関する問い合わせが増えつつあり、今後継続的な依頼先の確保および新規の依頼先を開拓していきたい。

3.組織体制整備

1)政策提言事業

○会員の増大
 2006年度も引き続き、正会員、賛助会員及び購読会員の獲得に務める。また、加盟団体の少ない地域における新規会員の確保に努力する。

○職員の雇用、事務局のパワーアップ
 2005年10月より、DPI日本会議において職員の雇用体制を確保したところであるが、今後、さらに整備を図っていく。また、DPI日本会議の役割、並びに求められる業務内容の複雑・多岐化に対応すべく、事務局員のパワーアップのための研修等を強化していく。

○財政及び予算執行
 厳しいDPI日本会議の財政状況から、安定的な財源確保について引き続き取り組んでいくとともに、懸案事項である寄付者が税制上の優遇措置を受けることのできる「認定NPO法人」の取得については、法制度の見直しを注視しながらその認定に向けた取り組みを進める。
 また、定款第5条(1)のEに基づく「基金」の運用及び日本会議会員の会費減免に関する対応規定の検討を進めるなど財源基盤の確保を模索していく。

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最終更新日2006.7.6